この3月、渋谷区が日本で初めて同性カップルを承認する条例案を議会に提出する。同性同士のカップルから申請があれば「結婚に相当する関係」と認める証明書を発行するというもの。可決されれば4月1日から施行される。同性カップルにとって大きな1歩だ。
実の娘に「自分は男だ」と言われた経験のある小林りょう子さんに、カミングアウトされたときのことを聞いた。
「娘として産み育てた子が22歳のとき、性同一性障害だとカミングアウトしました。一瞬、『神様はどうしてうちを選んだの?』と思いながら、『わかった。でも私は悪くないからね』と言いました(笑)。彼(娘は現在は男性に)は『これは自分の問題だからそう言ってもらえると助かる』と答え、その日から新たな親子関係が始まりました」
現在、小林さんはNPO法人「LGBTの家族と友人をつなぐ会」のスタッフとして、当事者やその家族を支援する活動をしている。小林さんの子どもがまだ彼女だった専門学校のとき、ゲイの同級生に「同じにおいがするけど、何か悩んでいない?」と言われ、新宿2丁目のお店に連れていってもらって、そこで初めて自分と同じような人に出会い、もやもやが吹き飛んだという。
その4年後のカミングアウト。が、すぐに“息子と母”にはなれなかった。
「1年くらい、ずいぶん衝突しました。私たちの世代は、“男と女”しかいないという教育でしたから、急に全部を理解できるわけがありません。ぶつかりながら、『どういうことなの?』『何がイヤなの?』と本人に聞いてきました」
そんな小林さんから、自分の子がトランスジェンダーかもしれないと思っている人たちへメッセージがある。
「思春期は揺れが激しく、子ども自身もわからずに戸惑っていることも多いんです。トランスジェンダーではなく同性愛者ということもある。無理に決めつけず、大人になるまでは一緒に勉強しながら見守ってあげてほしいんです。男であろうが女であろうが、ゲイであろうがレズビアンだろうが、かけがえのない子どもに変わりはないんですよ。それさえブレなければ、きっと大丈夫です」