病院のお世話になるような事態は、いつも突然やってくる。そんなとき頼りになるのが、さまざまな一時金なのだが……。
「健康保険や公的年金、各種の民間の保険は、加入者が申請しない限り、お金を受け取れません。たとえば、がんになったからといって、向こうから『お金が出ます』と通知されることはいっさいないんです」
この「申し込まなければ受け取れない」システムを、役所や保険会社の「申請主義」と呼ぶのは、NPO法人「がんと暮らしを考える会」の理事長・賢見(けんみ)卓也さん(39)。祖父をがん闘病の末、病院で亡くした経験から、’13年、項目ごとにQ&A方式で入力すると、利用者が現段階で使える「おカネ」に関する制度がわかるウェブサイト「がん制度ドッグ」を開発した。
そこで賢見さんに、主要な“申請しないともらえない一時金”を教えてもらった。
○高額療養費
「病院や薬局で支払った額が月ごとに自己負担限度額(年齢・所得で異なる)を超えた場合、その超過額が支給されるもの。加入する建保の窓口に申請します」
○退職に伴う雇用保険の基本手当
「雇用保険の被保険者が退職して失業中、前の給与の45〜80%を一定の日数、受給できます。治療などですぐに働けないときは、受給期間を延長することも可能。ハローワークに申請します」
○所得税の医療費控除
「本人・配偶者・親族のために支払った医療費に関して、一定額の所得控除を受けることができます。医療費・薬代・通院の際の交通費などが対象で、各年の確定申告で税務署に申請します」
○年金保険料免除制度
「収入減や失業などの際、国民年金の保険料納付が免除されたり、猶予されたりする可能性があります。これにより、未納期間を作らずに済みます。市区町村役場か、年金事務所に申請します」
次に妊娠・出産に関する制度を、看護師の資格も持つ特定社会保険労務士の加藤明子さん(38)に解説してもらった。
○出産手当金(会社員の場合)
「出産前42日、出産後56日の範囲で、会社を休んで給与がなかった期間につき、標準報酬日額の3分の2相当が支給されます。会社の健康保険組合に申請します」
○育児休業給付金
「育児休業の開始時(出産後57日目〜)の賃金日額×支給日数の67%が、180日目まで支給されます。以後は50%を支給。男性が育休を取得した場合も同様。ハローワークに申請を」
○雇用保険の介護休業給付金
「家族の介護のために休業し、給与の無支給や減額がある場合に、給与の40%が給付されます。介護休業終了後の一定期間以内にハローワークに申請を」
○遠距離介護割引
「たとえば故郷に住む両親など、家族の介護のために飛行機で帰省するような『遠距離介護』をしなければならない場合に、日本航空、全日空、スターフライヤー、ソラシドエアの各社で、航空運賃を割引しています」
まずはサイトで利用できる制度を確認。妊娠・出産や介護、あるいはそれ以外の分野でも、一時金は確実にゲットしよう!