第二次世界大戦の終結から70年という、大きな節目を迎えた’15年。そこで、本誌は戦後70年に読みたい作品を、著名人に薦めていただきました。
「いまの政界は、安倍総理をはじめ多くは『戦争を知らない子供たち』で構成されている。彼らの愚行に『ちょっと待て』と言わずにいられない80代、90代の先輩方のご意見には、政治家も国民も、素直に耳を傾けなアカン!」
’12年に立ち上げた「全日本おばちゃん党」で「うちの子もよその子も戦争には出さん!」と“公約”した大阪国際大学准教授の谷口真由美さん(40)が、最初に声を大にして言う。
「紹介したいのが、先日83歳で亡くなられた今江祥智さんの名作小説『ぼんぼん』です。ご自身の体験がたくさん詰まっている作品で、物語の舞台は大空襲前後の大阪です。主人公は、裕福な家のお坊ちゃん・洋。大空襲では、大阪城の周囲が大きく焼失しました。私は、祖母から『川まで逃げて生き延びた』と聞かされました。通っていた高校でも、グラウンドの防空壕に逃げた女子生徒が何人も亡くなったそうです。戦争作品の中でも、関西人がとくにスッと入っていける物語なんですね」
親近感を語る谷口さんだが、「戦時下」という全国共通の恐怖が迫る描写もある。
《『佐脇さんが、ひっぱられた』
『な、なんで?』
『トージョーはんが原因や』
『トージョーはん?』……》
「近所の佐脇さんが、気安く総理大臣のことを呼んだんでしょう。それを隣組制度で密告された。今の時代でいえば『アベはん、なに言うてんねん』って言ったら逮捕されるようなものですわ。でも秘密保護法が施行されている今、うかうかしていられんと、こんな描写からも思います」
また、この作品からは当時の女性たちが置かれた立場もよくうかがえると、谷口さんは言う。
「おなかを痛めて産んだ子が戦争に取られていくのを、笑って、名誉なこととして送り出さなければいけなかった時代です。女性としての歯がゆさ、無念も大きかったはず。そこが切々と伝わってきます」