安倍首相の「戦後70年談話」が話題だが、国民一人一人に“私だけの70年談話”があるはず。そこで著名人に語ってもらった「この人生を歩んできた私だからおくるメッセージ」。
16歳でカンボジアを訪問後、シリア、インドなどの紛争地や、スラムを訪ね続けるフォト・ジャーナリストの安田菜津紀さん(28)。20代の彼女がいま、伝えたいことは−−。
シリアには’07年、大学3年生のときに初めて訪れました。当時はまだ内戦前の平和で美しい街で、イラクなどから難民を受け入れていた。そこで知り合ったイラク人にこんなことを言われました。
「戦争ってどういうものかわかる?僕たちはチェスのコマでね、動かす人間はまったく傷つかないけれど、僕たちコマはどんどん傷ついていく。それが戦争なんだ」
戦争って、火花が散っているところにはスポットが当たるんです。でも目に見える形の火花が散らなくなった途端、報道もやむ。いまのイラクやアフガンがそうでしょう。戦争が小休止したり、終わってからも、生活は続いている。人々の苦しみは、本当はそこにあって、そこに私は目を向けていきたいと思いました。
難民キャンプでも新しい命は生まれます。その子供たちの故郷に爆弾がどんどん落とされていくのを武力で後押しする国になってはいけない。中東に行き感じたことですが、特にシリア人、イラク人は日本のことをよく知っています。戦争のこと、広島、長崎の原爆のこと、そして、その後の経済大国としての発展も……。
「あれだけメチャメチャにされてしまった国が、あれだけ発展を遂げた……日本はなんて素晴らしい平和国家だろうか。僕たちも日本みたいになりたいと思っているんだ」
それは彼らが戦争へのアンテナを張っているからでしょう。でも、日本の中にいま、彼らに誇れるような平和があるのかどうか……疑問です。私はほかのすべての国が武力を行使したとしても、日本だけが武力を行使しない最後の砦であってほしいし、それが何よりも日本人を守ることになると思うのです。