8月11日、九州電力・川内原子力発電所1号機(鹿児島県)が再稼働。日本の原発が2年ぶりに再び動き始めた。政府は原子力規制委員会が策定した“世界で最も厳しい規制基準”に川内原発が適合したことを受け、今後も新基準に適合するほかの原発の再稼働を加速していく勢いだ。
しかし、本当に安全対策は万全なのか。川内原発周辺には活発な活動を続けている火山がいくつも点在しており、火山や地震を研究している学者たちからは、火山噴火による危険性を指摘する声は少なくない。神戸大学大学院理学研究科の巽(たつみ)好幸教授(マグマ学)も警鐘を鳴らす。
「九州には巨大カルデラ火山が5つあります。噴火の規模にもよりますが、過去にあった巨大カルデラ噴火が起きた場合、5つのうちどこで起きても川内原発は何らかの影響を受けると思います。いろんなケースが想定されますが、火砕流によって原発が破壊された場合、放射性物質を含んだ火山灰が日本全土に飛散する可能性も考えられます」
新聞各紙が行った世論調査では、いずれも再稼働反対が賛成を大きく上回る結果が出ている。川内原発の事業主である九州電力に、火山噴火対策と安全性について聞いた。
「カルデラ噴火については、監視をすることで事前に予知できると考えております。巨大カルデラ噴火となると、地殻変動など地盤の変化が出てきます。火山のモニタリングを実施することで、少なくともカルデラ噴火の相当前の段階で、その兆候を検知できると考えております」(広報部)
火山学会をはじめ、火山学者の多くが科学的見地から、巨大カルデラ噴火の予知は「できない」と言っているのだが。前出の巽教授が、あきれた口調で次のように語る。
「現状としては、とても予知などすることはできません。前兆現象などがどういうものなのか、われわれも知らないわけです。そういった基礎的なデータがないにもかかわらず、彼らは『予知できる』と言っていますね」
九電が言うモニタリングとは、公共機関(気象庁、国土地理院)が行っているモニタリングの観測データを利用して、1年に1回行う評価のことだそう。そこで火山の状態に顕著な変化が生じ、カルデラ噴火に発展する可能性があると判断された場合は、原子炉の停止、そしてその時点から使用済み燃料の搬出などに関して、適切な対応を検討し実施するというのだ。
「巨大カルデラ噴火」の発生確率は今後100年間で約1%。可能性は極めて低いようにも思えるが、これは阪神・淡路大震災と同程度の確率だという。「つまり、いつ起きても不思議ではないということです」(巽教授)
安倍首相、これが政府お墨付きの“世界で最も厳しい規制基準”なんですね?