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春闘シーズンで続々と決まる企業のボーナス。本誌は、ニュースで話題の企業も含め、大手のボーナス事情を総力調査。経済団体の発表や労働組合への取材などをもとに、各社35歳モデル社員への支給額を算出した。

 

昨年、中国人観光客の“爆買い”によってボーナス額が増えた百貨店業界も、今回は支給額が横ばいに。百貨店業界は、昨年で“最後の増額”だったのだろうか。150万人以上の組合員数を持つ産別労組・UAゼンセンの関係者はこう語る。

 

「小売りや外食などのサービス業など内需型企業の加盟が多いわれわれは、自動車などの輸出産業に比べるとボーナス額は伸び悩んでいます。中国人観光客の爆買いが大きく報道されていますが、恩恵を受けるべき百貨店などの業種ですら好調ではありません。むしろ、観光客が足を運ばないような地方に店舗を構える百貨店などは前年比マイナスの業績なんです。それ以上に国内の消費の冷え込みが大きいです」

 

もうひとつ、今回のボーナスで明らかになったのが「同業間での深刻なボーナス格差だ」と語るのは組合関係者。

 

「総合商社といえば、日本を代表する高給で知られていますが、その商社業界でもはっきり明暗が分かれています。三井物産は、原油や鉱物などの価格の低迷により、3月期のグループ全体の決算で、創業以来初めて2千600億円の損失を計上することが報じられ、衝撃が走ったばかり。赤字を計上すれば即ボーナスはカットです。今まで、ボーナス額で三菱商事に並んでいた三井物産は今回ダウンし、他の商社との差がつきました。業界内での格差が最も激しいのは、電機業界にもいえます。三菱電機や日立製作所は昨年と同じく90万円近く支給されるのに対し、東芝とシャープはたった“1カ月分”の35~40万円なんです」

 

今季の月9『いつ恋』が月9史上最低視聴率である9.7%をマークしてしまうなど、低視聴率にあえぐフジテレビは100万円のボーナス。“大台”はキープしているものの、昨年の夏のボーナスと比べると30万円の減額となった。ライバル局の日本テレビやテレビ朝日を相手に、ボーナス額でも辛酸を舐める可能性がある。

 

“勝ち組”と“負け組”――。業界内でも、はっきり2つにわかれた今回の春闘。しかし、経済アナリストの森永卓郎さんは「“勝ち組”の賃金でも家計には足りない」と語る。

 

「日銀は2%の物価上昇目標を掲げているうえに、来年には10%への消費税引き上げも行われます。われわれの生活を維持するためには、賃金が現在の額の4%上がらないといけない訳です。それが今年の春闘を見ると、ベア、ボーナス両方の面から見てもその4%に達しているとは言えません。ベアとボーナスが多少上がっても、消費増税によって物価が引き上げられてしまえば、実質的に家計に入るお金は減っていく一方なのです」

ボーナスが増えなかった“地獄”企業はよりいっそう厳しい1年を強いられそうだ。

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