これまで地域の医療を支え続けてきた各自治体の公立病院。だが、その経営は多額の税金が投入されて成り立っている。税金が投入されなかったら、その収支はどうなるのか−−。
かつては“全体の70%が赤字”と危惧されていた自治体病院。だが今年3月、総務省が発表した「公立病院経営改革事例集」では、’14年度には赤字病院が55.2%にまで減少していると記されている。この数字について、ウェブサイト「病院情報局」を運営するケアレビュー代表の加藤良平さんが解説する。
「公立病院は、昔から赤字が多いといわれていました。しかし、実際にどれだけ厳しい状況なのかは見えづらい。それは“税金”が“収入”として計算されているためです。黒字病院が増えたという総務省の調査結果は、“税金で赤字を埋めた病院”も、黒字としてカウントされているからだと思います」(加藤さん・以下同)
もちろん、採算化が難しい周産期や小児科、救急、そして過疎地やへき地での医療は、赤字覚悟でも続けるのが公立病院の使命でもある。
「地域に必要な医療は“赤字”であっても税金で支えられるべきでしょう。しかし、民間病院に任せられる機能を分担する、経営体制を見直すなどすれば、より効率的に運営できる病院もあるはず。総務省も公立病院の改革に力を入れていますが、本来なら税金投入の必要のない“悪い赤字”があるならば、見直す必要はあるはずです」
その参考になれば−−と加藤さんが’13年度の総務省『地方公営企業年鑑』を基に算出したのが、764の自治体病院(独立行政法人は除く)の医業収入から、税金等を差し引いた「純医業収入」。その「純医業収入」に対して、どのくらい支出があったのかを表したのが「医業収支の赤字率」。このマイナス率が高いほど、実際の赤字率が高いということだ。
上位は北海道が多く、1位の苫小牧病院は約1億4,000万円の収入に対し、収支は約8億5,000万円のマイナス。収支率マイナス611%で、’14年に閉院している。全体のランキングでは764施設中、純医業収入が黒字なのは、たったの44施設。全体の約95%が、実質“赤字病院”となっていた。
なぜこれほどの赤字体質なのか。公立病院の産婦人科で勤務経験のある医師は、次のように語る。
「給料は公務員給料に合わせているから、仕事をしてもしなくても一緒なんです。これでは志を高く持っている医師もやる気がなくなります。無駄な人員も多いのも特徴です」