’16年を彩った「女心に大ヒット」した美アイテムの数々。ブームの裏には女性仕掛人がいた。そんな女性仕掛人たちが開発秘話を語ってくれました!
■カネボウ化粧品「エビータ ビューティホイップソープ」
’16年9月1日に発売以来、3カ月間で62万個の大ヒット!予想をはるかに上回る実績に。バラの花びらが開くように泡ができあがるのがかわいらしく、年代を問わず女性に大ウケだ。
「エビータは50代以上を対象とした基礎化粧品のシリーズです。キレイになりたいけれども、手間がかかるのはちょっと、という方もいらっしゃいます。そこで、気持ちも高めながら、エイジングケアもできる商品を作れないだろうかと考えたのが、’14年のことでした」
こう話すのは、カネボウ化粧品商品開発部門・ケアグループの梶直美さん(39)。当時注目されていたのが、エスプレッソの表面にフォーム状のミルクを立体的に形作る3Dのラテアート。洗顔料も、フォームタイプの人気が高まってきたこともあり、フォームでバラの花を作ることを思いついた。
しかし社内には「インパクトある商品を作っても、消費者からはすぐ飽きられてしまうのでは」という声もあった。そこで梶さんは、消費者が「繰り返し使いたい」と思うような商品づくりを目指し、200人以上のモニターに調査を行ったという。
処方、容器、香料の研究担当者と連携しながら、泡の濃密さ、香りのよさ、見た目のかわいさなど、消費者の求めているクオリティを追求していった。特に苦労したのは、噴き出し口。バラの花びら状になるように、切り込みの角度を内側と外側では異なるようにしたのだという。
「試作の段階からすでに、見せた人たち全員が『きゃあ!』って歓声を上げてくれました(笑)。そこでエビータのターゲット層の50代にこだわらず、あらゆる年代層の女性に楽しんでもらおうと、パッケージも白地に薄いピンクのバラと、かわいらしいデザインにしたのです」(梶さん)
発売直後から評判は上々で、インスタグラムやフェイスブックなどのSNSで一気にその存在は知れ渡った。梶さんが驚いたのは外国の方から評価も高かったことだ。
「海外の美容ファンの方がSNSで紹介をしてくださったみたいで、ヨーロッパやアジアでも広く知っていただけたようです。日本に旅行に来た海外の人たちがお土産に買っていくことも多いそうです」(梶さん)
■トリンプ「スロギー ZERO FEEL」
’16年にブレークしたノンワイヤブラ「スロギー ZERO FEEL」。前年比で530%、シリーズ累計販売枚数は200万枚を突破した。「究極に“楽”なブラジャーを作りたいと、考えました」と語るのは、トリンプ・インターナショナル・ジャパン株式会社プロダクトデザイン2部の河野智美さん(44)。
ヒントになったのは、ブラジャーを卒業したシニア女性向けに販売されている、カップ付きインナーだった。しっかりした生地とワイヤが当たり前に備わっており、縫製なしには作れないとされていたブラジャーだが、その概念を超えるものを河野さんは目指した。
「それが実現できたのは、日本のものづくりの技術の進化のおかげです。まず生地ですが、かつては一方向にしか伸びなかったものが多方向に伸縮するようになり、さらに端を縫製しなくてもほつれないようになり、しかも薄くなりました。また接着技術も進んでいます。弊社は’08年に、伸縮性にすぐれた生地と接着技術を利用したシームレス(縫製のないこと)の『接着ショーツ』を発売していますが、それをブラジャーに応用したのがこの製品なのです」(河野さん)
接着ショーツ発売時は、テープ状の接着剤を使用していたが、その後、接着面も伸びる特殊な手法が誕生。「スロギー ZERO FEEL」ではこの最新技術が生かされたことで、まさに「ZERO FEEL」=「つけていることを忘れる」ほどの、快適さを実現した。
「スロギーでは数値的にも“楽”を証明しています。ワイヤブラジャーとの衣服圧(皮膚への圧迫感)を比較するため、計測した実験では、とくに女性が締め付けを感じやすいアンダーワイヤに相当する部分をはじめ、計測したすべての箇所で衣服圧が激減。両胸の間に至っては、衣服圧がゼロになりました」(河野さん)
現在ではジュニア世代のファーストブラから、シニア層まで幅広い世代に圧倒的な支持を得ている。跡がつかないため、水着になる前にも着用できるなど、用途の広さも魅力のひとつだ。