(撮影:松陰浩之)
「小池都知事はダイバーシティ(=多様性のある社会)の実現に向けて、都政改革を進めていらっしゃいます。私は、ダウン症のある子どもを持つ母親として、育児の現場にいる者として、民間の子育てや、教育・保育環境の充実などのために、都知事の政策をいつかは直接、サポートしたい。そう考えて都知事の政治塾『希望の塾』政策立案部会の試験を受けたんです。そして2月2日に“合格通知”が届きました!」
大きな瞳と笑顔でこちらをしっかりと見つめて話すのは、元テレビ朝日アナウンサーで1児の母・龍円愛梨さん(39)。退職後、’12年にアメリカ・カリフォルニア州に渡り、現地で活動する実業家と結婚。’13年5月5日に待望の第1子・ニコくんを36歳で出産したが、生後1カ月でダウン症があることがわかる。
ダウン症とは、通常は2本の21番染色体が3本になることで発症する先天性の遺伝子疾患で、知的障害や先天性の心臓、食道、甲状腺などの疾患、視聴覚障害など、さまざまな症状を伴うことがある。およそ700人に1人といわれるダウン症だが、乳幼児期に最も心配なのは心臓の病気の有無やその程度だ。
龍円さんはもちろん、四六時中離れずにニコくんの育児に専念。幸いニコくんは大きな手術をすることなく、順調に育ってきた。そして’15年、互いのライフスタイルの変化から夫婦は別離を選び、龍円さんはシングルマザーとして生きていくことを決意。帰国して、高齢の両親のいる都内の実家で、ニコくんとひっそり暮らしてきた。
そんな彼女に再びスポットが当たったのは、今年1月7日、「希望の塾」が、7月の東京都議会議員選挙の候補者を絞り込むための試験を開催し、龍円さんも受験していたことによる。試験終了後に会場を出た龍円さんは、詰めかけた報道陣に次のようにコメントした。
「都議選にはお声もかかっておりません。都の条例など、政策面で自分の意見をお伝えすることで、小池都知事をお手伝いしたいんです」
「希望の塾」への参加が「政治家への転身ではない」ことを明言したのだ。後日、本誌の取材に対し、龍円さんは同塾に参加した理由を次のように語った。
「アメリカでは、あらゆるスペシャルニーズ(特別な支援を必要とすること)のある子が通常学校・学級で過ごす“インクルージョン(包括)教育”が広く実践されています。本人にもいい効果があるし、周囲の子も、いろんなニーズのある子がいるということを理解し、どう接し、手を貸せばいいのかを学んでいきます。ところが日本では、特別支援学校・学級と、『健常者』『障害者』が分かれていた……。私は、ニコが就学するまでを目標に、日本の教育現場が変わってほしいという思いがあります。だから『希望の塾』に入塾したんです」