2月の週末、都内のホテルの宴会場の受付に、長蛇の列ができていた。列に並んでいるのは50代から70代の男女。この行列は、日本初の結婚相談所「マリックス」(東京都新宿区)が2カ月に1度催す「親おや交流会」の受付けを待つ参加者たち。同社代表の升村要さんがこう説明する。
「親おや交流会とは、独身者の親たちだけが参加する交流会です。その目的は“子どもの婚活”。いまは結婚が難しい時代。親同士が自身の子どもの情報を交換し合い、会が終わったらお子さんに『この人はどう?』と、提示する。そこまでが親の“お仕事”。あとはお子さんが自分で判断し動くんです。この交流会は全国で年間20回近く開催しており、今日は138回目。約160名が参加されます」
今回本誌は、当日行われた「親おや交流会」に潜入することに成功。受付け開始30分前にして、半数以上の参加者が会場前に集合してきた。交流会の参加費用は1万6,000円。初回の参加者は、登録料が別途2,000円かかる。ほどなくして、受付けを終えた参加者は、期待と不安の表情を浮かべながら、配られた資料に目を通している様子。
「この資料には、参加者の子どもたちのプロフィールのようなものが記載されているんです。交流会が始まるまでに資料から相手の年齢や条件を確認し、子に紹介したい人を10人ほどに絞っていきます」(升村さん)
会場での座席番号と、子どもの年齢、婚歴、血液型から、最終学歴、職業、身長、体重、趣味、そして長所が記載されている。名前や連絡先は、書かれていない。会場入りした親たちは、真剣にそれをチェックしているのが見て取れる。
資料に目を通すこと40分弱、いよいよ交流会がスタート。最初の40分は、息子を持つ親が、資料でチェックした娘を持つ親の席へと向かい、情報交換を行う。親同士の話が進むと、子どもの写真つきの自己紹介書を交換する。名前や連絡先は、この自己紹介書に載っている。
次の40分間は、娘を持つ親が、目星をつけた息子さんの親の席へ移動する番だ。医師や公務員の息子の親には何人もの親が集まっているようだが……。
「条件により男性のほうが明暗の分かれる傾向があります。娘さんの親は、お嫁に出した後のことも心配でしょう。近くに置きたい気持ちもあるので、転勤の有無なども考えているようです」(升村さん)
しかし、35歳の娘の父親は、本誌記者に力強くこう語った。
「結婚すれば、親同士の付き合いも当然あるわけで。職業ももちろん大事ですが、やっぱり親同士の話が盛り上がらないと、送り出しづらいですよね、親子の性格は似るって言うし(笑)。隣の人とは趣味も一緒でさっきからずっと話しこんじゃって……この人が男の子の親だったら決めちゃってもよかったんだけどなあ(笑)」
親同士が自己紹介書を交換したあとは、実際に会うかどうかを子どもたちが決める。先方に会う気がない場合は、2週間以内に先方に自己紹介書を返却する決まりになっている。会場では「自己紹介書が足りない!」とコピー機を借りる親も。盛況のうちに交流会は終了した−−。
升村さんは、“親婚活”が活発に行われている状況をこう見ている。
「テレビなどで有識者が、『親が婚活してだらしない』『ふがいない』とおっしゃいますが、まったく違います。日本という国は、家庭の縁談で結婚が決まるのが普通でした。親の世代はお見合い結婚が一般です。生涯未婚率が30年前は50人に1人でしたが、いまでは男性は5人に1人です。お見合い文化もなくなりつつあるいま、待っていても縁談がやってこないのではと心配して、活動をはじめるわけです」
仲人も少なくなった現代、「代理仲人」の役目が、親としての“最後の仕事”になりつつある!?