福島県を中心に被災地を歩き、被災者や復興支援団体への助成・支援を行っている東日本復興支援財団の専務理事、荒井優さん(39)が語る、「今、被災地に必要な支援」とは――(以下は荒井さんの言葉です)。
「被災者の方のなかには、震災から3年目の今がいちばんつらい、という方も少なくありません。これまで、全速力で走ってきて、みんなをリードしてきた人が、息を切らしてしまったように、目標を見いだせなくなってしまう。非日常の2年間を経て、今の状況を『日常』と受けとめざるをえなくなってきた。そんな『日常』に戸惑ってしまったのでしょうか。
今、必要としている支援は、地域や世代によって異なるだけでなく、人によって多種多様です。私たちの財団ではこれまで20億円以上使って支援活動してきましたが、とても印象的なのが、わずか461万円しかかかっていない『18歳まで携帯料金サポート』という活動です。これは震災でお父さん、お母さんを亡くした子どもたちの携帯電話料金を月に1万円までを支援するというもの。
この活動の担当者で岩手県出身の女性が、その子たちと定期的に連絡をとりあい『今月課金ゲームを使いすぎじゃない』『おばあちゃんとケンカしたと聞いたけど、その後、どう?』などと話しかけていくうちに、試験や部活、進路の相談にのるようになったのです。彼女の行っていることは、金額や規模の大きさだけでなく、気持ちがこめられた人と人とのつながりです。
被災地を旅行してお金を落とすことも大切ですが、ぜひ、そこで暮らす人たちに声をかけて、つながってみてはいかがでしょうか。仮設にあるカフェのママさんに話しかけてもいい。ボランティアの団体や語り部ツアーに参加してもいいでしょう。
そこで話しかけることで、本当に必要な支援が見えてくるでしょう。さらには、そんな外からのやってきた声がきっかけになって、被災者の人たちの目線が変わる可能性だってあるのです」