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「成年後見制度を悪用する横領事件が後を絶ちません。9月30日には、姉の口座から約2,500万円を横領した妹が逮捕されました。7月には、弁護士が2人の認知症女性から約5,000万円を横領する事件もありました。昨年1年間で831件、約57億円の被害があったとの報道もあります」

 

こう話すのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。成年後見制度とは、認知症などで判断能力が低下した人の財産の管理・運用や介護施設などとの契約を、後見人が支援する制度。’00年の導入以来、利用者は年々増え、現在は18万人を超えている(’14年・最高裁判所)。この制度の賢い選び方を、荻原さんに聞いた。

 

「まず、成年後見制度には2種類あります。1つは、認知症などになる前に、本人が前もって決めておく任意後見制度。もう1つは、本人の判断能力がなくなった後で、家庭裁判所が後見人を選ぶ法定後見制度です。後見人には、資格などは必要ありません。家族や親族がなることが多いのですが、最近は、専門知識のある弁護士や司法書士も増えています」

 

成年後見人は、判断力の低い本人に代わって、預貯金や現金、資産などの管理を行い、介護や医療の費用などを支払う。冒頭のような事件もあるので、後見人は慎重に選びたいもの。できれば元気で判断能力があるうちに、自分で後見人を決め、認知症になったらどうしてほしいかを相談しておきたい、と荻原さん。

 

「とはいえ、身寄りのない方や親族と不仲の方などは、第三者を選ぶことに不安を感じることもあるでしょう。そんな方は、信託銀行の個人信託を検討してみましょう。個人信託とは、信託銀行にお金を預ける際に、『認知症になっても、自分の介護費用は毎月支払う』や『自分の葬式代を家族に送る』『自分の死後、家族に毎月お金を送る』など使い道をあらかじめ決め、契約するものです」

 

後見制度は本人が亡くなり相続を行えば契約が終わるが、個人信託は死後も継続的に資金援助ができるメリットがあるそう。

 

「また、成年後見制度の利用者が財産管理のために使う『後見制度支援信託』もあります。介護や医療費など日常のお金や生活状況のチェックなどは後見人に、相続などの財産管理は信託銀行にと分担支援が受けられます。各信託銀行がプランを用意していますので、比較してください」

 

認知症で介護保険を利用している人は約280万人。正常な状態と認知症の中間にいる人などを合わせると、約820万人。65歳以上の人の約29%は認知症の傾向があり(’14年・厚生労働省)、誰がいつ発症しても不思議ではない。

 

「ある程度の年齢になった方は、認知症になったと想定して試算してみましょう。必要なお金を確保して、残りは楽しく使っていると、認知症になりにくいかもしれませんよ」

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