「1月29日、日銀は初めてマイナス金利を導入すると発表しました。マイナス金利とは、銀行にお金を預けると付くはずの利息が、反対に差し引かれる状態をいいます。日銀のいうマイナス0.1%では、1万円を1年間預けると9千990円に目減りしてしまうのです。ただし、これは銀行が日銀に預金する際の金利です。私たちの預金金利がマイナスになるわけではありません」
そう話すのは経済ジャーナリストの荻原博子さん。’13年に日銀の黒田東彦総裁は「異次元の金融緩和」を断行した。日銀は年間80兆円もの国債を買ってその代金を銀行に流す→銀行は企業に融資→企業がそのお金を設備投資や給料アップに使う→景気が回復するというシナリオだった。それから3年。銀行は企業への融資を増やしてはいるが、それでも、バブル時代には及ばない状況だ。
「銀行が安心できる融資先が少なく、余った資金は日銀の当座預金に無駄に積み上げていく、いわゆる“ブタ積み”。’13年3月に約58兆円だった日銀の当座預金は、いまや約260兆円に膨れ上がりました。これ以上の“ブタ積み”を阻止し、企業融資を増やしたい日銀は、伝家の宝刀ともいえる、当座預金のマイナス金利に踏み込んだのです」
日銀の意図はわかるが、融資を増やすには企業の借りる意欲が問題だ。昨年12月の全国企業短期経済観測調査(短観)によると、多くの企業経営者が「3カ月後の景気は悪化する」と回答。中国経済の失速や円高、年初来の株価の乱高下なども加わり、企業経営者は先行きに不安を感じている。
「そんなときに、借金をして設備投資するでしょうか。日銀の思惑どおりに進むとは思えません。それどころか、前代未聞のマイナス金利で不安が助長され、社員の給料を抑える企業が増えるのではと心配です。給料の上がらない厳しい春を迎える方が多いでしょう」
また、マイナス金利ならお金を借りると利息がもらえる、というのは誤解。マイナス金利は日銀と銀行間の取引にだけ適用されるので、私たちのローンには関係がない。だが、マイナス金利の場合、銀行は預けると目減りする日銀の当座預金を避け、比較的安全な長期国債を買おうとする。人気が集まると利率が下がるため、長期国債の利率である長期金利は過去最低を記録。その結果、長期金利を基準とする住宅ローンの金利も、引き下げが始まっている。
「ローン金利が下がれば、借り入れのチャンス。今回の引き下げでは固定金利から固定金利への借り換えでも、大きなメリットが期待できます。たとえば、35年ローンを組んで10年経過後、残高が2千万円の方が、金利2.5%のフラット35から、金利2%のフラット35に借り換えたとします。借入期間は変えず残りを25年で返済すると、年間約6万円、返済総額は約150万円減ります。手数料を約20万円払ってもお得です」
アベノミクスの恩恵もなく、今年も苦しい家計が続きそう。こんなときこそ、「借金減らして現金増やせ」。借金のない健康家計を目指そう。