「確定拠出年金とは、毎月決まった金額を積み立て、自分が選んだ方法で運用し、できた資金を老後に受け取る仕組みです。公的年金の支給は65歳から受け取れる、いわば自分でつくる年金です」
こう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。今年1月から、確定拠出年金の加入対象が公務員や専業主婦などにも広がり、20〜60歳のほとんどが加入できるようになった。特に注目されているのが、1.積立金が全額、所得控除され、積立て期間中の所得税や住民税が安くなる。2.通常は投資の運用益や預金利息から20.315%の税金が引かれるが、確定拠出年金では非課税。3.受け取るときにも控除の仕組みがある。といった3つの税制メリットだ。
確定拠出年金は、これらの節税効果を強調し薦める専門家も多いが、荻原さんは「実は、50代女性のなかには、メリットがほとんどない方もいます」と話し、4つのデメリットを挙げる。その4つのデメリットを荻原さんが解説してくれた。
【1】最大のメリットといわれる所得控除が受けられない
「50代女性には専業主婦や103万円以下で働くパートの方が多いと思いますが、この方たちはそもそも所得税や住民税を納めていません。節税する元がないので、メリットは享受できません」
【2】60歳まで引き出せない
「老後資金として蓄えていても、60歳までに親の介護や家族の病気、大黒柱の夫がうつになり退職などのまさかの状況がないとは限りません。そんなとき、定期預金なら解約、株式投資や投資信託なら売却すれば、すぐに現金化できます。しかし、確定拠出年金は本人が亡くなるか重度の障害を負う以外は、60歳まで現金化できません」
【3】手数料
「確定拠出年金は、銀行や証券会社などの専用口座で運用を行うため、運用期間中は毎月、口座管理手数料がかかります。手数料は国民年金基金連合会などに月167円と、金融機関がそれぞれ設定する手数料を合わせて、月167〜700円。月400〜500円が一般的です。たとえば、専業主婦の積立て上限である月2万3,000円を積立てるとき、手数料が月500円なら手数料率は約2.2%です。さらに、投資信託など運用する商品によっては、別途信託報酬なども必要です。長期投資のメリットを説く方もいますが、確定拠出年金では積立ては60歳まで、50代女性には10年ありません。これだけの手数料を上回る利回りはむずかしいと思います」
【4】受け取り時期
「確定拠出年金を60歳から受け取り、公的年金受給までの“つなぎ”としたい方が多いと思いますが、50代女性が今から加入すると、受け取りは61歳以降にずれ込みます。確定拠出年金を60歳から受け取るには、10年以上の加入が必要です。加入期間が8年以上10年未満だと61歳から、6年以上8年未満だと62歳からと、段階的に遅くなります」
確定拠出年金は、「金融機関には手数料が稼げるチャンスですし、国は投資を増やして株価を安定させたいために、大々的に宣伝するでしょう」と荻原さん。私たちはそれらに惑わされず、自分にとってのメリットを見極めることが大切なようだ。