マイナス金利、トランプ政策、貿易赤字、人口減少…今、私たちが直面するほとんどの問題は、経済学の基本的な知識で理解でき、適切な行動へ結びつけることができる。
経済学と聞くととっつきにくそう、数学だらけで何の役に立つのか分からないと、端から拒否する前に、経済学を学ぶ2つのメリットを説く『マクロ経済学の核心』(光文社新書)を上梓した飯田泰之・明治大学教授の声に耳を傾けてみよう――。
まず第1のメリットは、経済学はほとんどの「ビジネス・経済」関連本の元ネタになっているということだという。飯田さんがこう語る。
「経済事情や経済政策の解説書(例えば『トランポノミクスがわかる本』のようなヤツです)の基礎にあるロジックは経済学の知識であることがほとんどです。解説の対象――例えばトランプ政権の経済政策について、その効果や影響を基礎的な経済学の知識で予想すれば立派な解説書のでき上がり。ということは、経済学の基本さえ知れば、多くの解説書は目次だけ見ればその内容のかなりの部分が理解できるようになると言っても大げさではありません。経営学に近い分野の本についても、これは一部当てはまります。現在、経営学と経済学の考え方はかなり似通ってきています。そのため、企業経営やマーケティングのテーマを考える上でも経済学の知識は重要な導きの糸となり得るでしょう」
そして第2のメリットとは?
「『自身の立ち位置を知る』ツールとしても経済学の基礎が必須の教養になりつつあります。どの業界にいても、今、世界経済はどのような状況にあるのか、さらには様々な経済政策が株価に、地価に、そして自社・自産業にどのような影響があるのかを知らずに安定的なビジネスを営むことはできません。戦いに望む際、戦場の地形・天候・温度を知ることが不可欠なように、ビジネスにおける戦場を知るためにはマクロ経済学の知識が役に立ちます。そして、一国民、一有権者として各政党が唱える『経済政策の目玉』が誰にとって得で誰にとって損かを知るためにも、マクロ経済学の知識が欲しいところです」
今年も中間地点を迎えたところで心機一転、経済学の入門書を紐解いてみると意外なきっかけを掴めるかもしれない。