「日本では親しい間柄でもお金の話を避けてしまう雰囲気がありますよね。学校ではちゃんと教えてくれませんし。しかし、人が安心して生きていくためには、知っておくべき“お金の教養”というものがあると思うのです。お金とどうつきあえば人生で失敗しないのか? 子どもからご老人まで、家族全員で“お金に負けない知恵”を身につけることは、とても大切なことではないでしょうか」
そう話すのは、経済評論家の山崎元さんだ。銀行、証券会社、保険会社など金融機関で計12回の転職を経て、現在は、資産運用専門のコンサルタントとして活躍。お金との向き合い方をよりわかりやすく伝えたいと、この3月に『人生を自由に生きたい人はこれだけ知っていればいい お金で損しないシンプルな真実』(朝日新聞出版)を出版している。
そこで「お金で人生を台無しに……」ということにならないよう、家族に肝に銘じてほしい「お金の鉄則」を、山崎さんに教えていただいた。
■お金の「平均値」を知っても幸せになれない!
「老後にゆとりをもてる生活費は、月額で平均34.9万円といわれていますが、これは『生命保険文化センター』の希望的金額であり“生命保険に入ってもらう”ための数字。これに惑わされてはいけません。大切なのは、個々の家族にとって必要な数字です」(山崎さん・以下同)
だが他人との差をアピールするため、つい無理をしがち。
「不動産のグレードを下げる、教育費に見えを張らないなど、支出をひとつ減らすだけでも家計は楽になりますよ」
■借金とは金利で「時間を買う」こと!
「欲しいものを“いま”手にするためにするのが、借金です。いわば、金利で時間を買っていることになります」
ただし、時間の値段は安くない。銀行のカードローンは年14〜15%。50万円の借金をすると、1年後には、金利・約7万円を支払うことになる。
「また借金は『いい借金と悪い借金』があることを知っておきましょう。いい借金は、(1)返せる見通しがある。(2)金利を払っても結果として得だと判断できる。(3)金利がさほど高くない。この3条件がそろっているものだけです。たとえば、奨学金はいい借金と言えるでしょう」
■頻繁に「リボ払い」をする人とは結婚しない!
「私が大学の授業で学生たちに必ず伝えるのが、この教えです。社会人として生きるうえで大切なことは、時間厳守、挨拶、借金せずに暮らせる、この3つだと私は思います。借金の中でも、何回かに分けて返済する『リボルビング払い』は、多くが15%以上と金利が高く、返済期間が長期にわたる。そのため、なかなか額が減っていかない危険なものです。これに何度も手を出してしまう金銭感覚は、いずれ破綻するでしょう」