秋は「いも・栗・なんきん」。
女性が好きなものの代名詞としてよく使われる言葉ですよね。出どころは諸説あるようですが、「とかく女の好むもの芝居浄瑠璃芋蛸南瓜」という井原西鶴の節から広まったのだろうといわれ、それが女性の好きな秋の味覚、「いも・栗・なんきん」へと変化したようです。
私も例にならい、いも栗なんきんが大好きなわけで。秋になると、あれもこれも食べたくなってしまいます。フランスで秋のスイーツといえば、なんといっても「モンブラン」でしょう。
左:老舗「アンジェリーナ」のモンブランは、安定のおいしさ。
右:日本人パティシエMORI YOSHIDAさんによる、ドレスのようなモンブラン。
フランスでも、モンブランはとりわけ女性に人気があるようです。あるとき招待されたディナーに、「フランス人はみんなモンブランが好きだろう」と思い込んで多めに買っていったところ、「僕はモンブラン、そんなに好きじゃないんだ」と、男性同士でサントノーレ(シュークリームと生クリームがたっぷりのったケーキ)の取り合いになってしまう……という事態が発生しました。日本でもフランスでも、国境をまたいで男性はなぜ、いも栗なんきんに興味がないのか? 不思議でなりません。
モンブランに目がない私は、秋になると必ず有名パティスリーをめぐって食べ比べをします。「モンブランといえば」のアンジェリーナは、マロンクリームがあんこのよう。和生菓子のようにぽってりと甘~いマロンクリームが、生クリームとメレンゲ菓子を包んでいます。大きさは日本のモンブランの1.5倍はあるかもしれません。これをぺろっとたいらげるフランス人はさすがだな、と常々感心しております。そして、このモンブランを食べながら、これまたアンジェリーナ名物の超濃厚ココアを飲んでいる人を見かけると、見ているこちらが鼻血を出しそうになります……。
また、最近は、モンブランにカシスや柑橘系のものを合わせるのがはやり。けれど、私はこれがあまり好きではなく、栗は栗の味だけで楽しみたい。パリで活躍する日本人パティシエMORI YO-SHIDAさんの、甘すぎず、栗をしっかり味わえるモンブランがとても好みです。
左:FAUGIERのマロンクリーム。ずっとサルだと思っていたマスコット、よく見たら栗坊やだった。
右:フロマージュブランにマロンクリームをかけて食べるのがフランス風。
フランスではモンブランに限らず、栗のペーストを使ったデザートがたくさん存在します。フランス土産の定番として有名なマロンクリーム「FAUGIER」は、目にしたことがあるかたも少なくないと思います。
では、このマロンクリームをどうやって食べるのでしょうか。
パンに塗って食べたりしてもおいしいですが、フランス人はこのマロンクリームを「Fromage blanc (フロマージュブラン)」に添えていただきます。フロマージュブランとは、フランス語で「白いチーズ」という意味。でも、味はチーズというよりクリーム。デザートとしていただくことがほとんどです。ヨーグルトより酸味ひかえめで、生クリームよりあっさりしている、ふたつのちょうど中間くらいのもの。私はこのフロマージュブランの、ヨーグルトよりなめらかな口当たりが好きで、マロンクリームと合わせるのみならず、はちみつをかけたりナッツ類を加えたり、年じゅう食後のデザートとしてアレンジを変えて楽しんでいます。日本ではフロマージュブランを見かけないので、マスカルポーネチーズなどで代用すると、立派なデザートになると思います。
左:びっしりと並ぶ種類豊富なかぼちゃ。でも全体的に水くさく、日本のほっくりしたおいしさのかぼちゃとは別物。
右:スープにするとおいしいかぼちゃも、やはり男性陣からは不評。
フランスのさつまいもやかぼちゃは水くさく、お菓子にしても全然おいしくありません。最近やっとフランスでもハロウィーンを楽しむ習慣が定着してきたため、かぼちゃは〝「ジャックオーランタン」をつくるためのもの〟として、子供たちから慕われるようになりましたが……。
フランスの秋は栗! 栗に集中し、いろいろなデザートを楽しみたいものです。