「『候補者男女均等法』が成立した16日の夜、野田聖子さんに、『おめでとう!』とお祝いメールをしました。国会議員時代、私は野田さんと一緒に、女性議員数の拡大をはじめ、男女共同参画の課題について取り組んできました。それを野田さんが継続されてきた成果が、形になった瞬間だったんです」
こう語るのは、小池百合子東京都知事(65)。
5月16日、野田聖子総務大臣兼女性活躍担当大臣ら、与野党の議員の尽力によって、「候補者男女均等法(政治分野における男女同参画の推進に関する法律)」が成立した。これはどのような法律なのか。女性の労働問題に詳しい圷由美子弁護士が解説してくれた。
「国会や地方議員の選挙時に、政党や政治団体は男女の候補者数をできる限り均等にすべきという“努力義務”を定めた新法です。『政治は男がやるもの』とする古い慣行に風穴を開けたことは快挙です。しかし強制力はなく、自主性に委ねられるため、国民は各党の多様な民意の取り入れへの本気度を比較し、チェックする必要があります」(圷さん)
ともあれ、公布と同時に施行されたこの法律は、女性参政権がなかった時代から今日まで、「権利の拡大」のために闘ってきた、小池都知事を含む女性たちのバトンタッチの末に実現したものだ。
小池都知事に、これまでの“闘い”について聞いた。
「私は高校生のころから、『社員は男性が多く、女性はせいぜいコネ入社から寿退社』という男性社会の日本では、自分がやりたいことができないと思っていました。海外留学後にキャスターになり、世界各国の情勢を取材する中で、イギリスの故・サッチャー元首相が活躍する姿を見ながら、なぜ日本は議員の女性比率が低いのかと疑問を抱いていたんです」(小池都知事・以下同)
小池都知事は’92年に参議院議員に初当選する以前から、「人口の半分は女性なのに、議員のこの比率はおかしい」と感じていたのだという。そして日本新党(当時)で候補者を選ぶ立場になったとき、「多くの女性候補を立てる」戦略を掲げた。
「選挙に出馬するというのは一般の方にはなかなか考えにくいし、お金もかかること。だから、女性のための政治スクールも開催したり、女性を政治の世界に導くためにいろいろ努力しました。私はよく『宝くじは買わなければ当たらない』と言っています。まずは女性候補者を立てなければ増えない」
さらに、’12年の自民党時代には、党内に委員会を立ち上げた。
「『女性が暮らしやすい国はみんなにとっていい国だ特命委員会』という長い名前の会です。通称『1192特命委員会』。そこで掲げた政策の1つが、『2030』の達成でした」
「2030」とは「2020年までに女性議員や女性管理職を30%に引き上げる」という運動のことだ。’16年に東京都知事に就任した小池都知事は、昨年7月の都議会議員選挙でこの目標にチャレンジした。
「都民ファーストの会は、17人の女性候補者を擁立し、全員が当選を果たしました。法というより、政党や会派のリーダーに本気の意志があれば、挑戦し、実現できることなんです」
現在、都民ファーストに所属している都議会議員のうち、女性議員が占める割合は32%と、30%の目標をクリアした。さらに、都議会でも女性比率28.5%と飛躍している。女性議員が増えるメリットを小池都知事はこう語る。
「女性議員は、世の女性たちと同じ苦労をして、同じ目線で課題解決のために努力をすることができます。さらに、身近な注文に即座に対応できるのも、女性の強みなんですよ」
いま、都は「待機児童ゼロ」の目標達成に向けて、ベビーシッター制度の充実のために経験豊富な高齢者のスキルを労働力として役立てる方策を進めている。これも女性が多いからこそ出るアイデアだ。
小池都知事は、1回生議員に次のようなアドバイスを送っているという。
「まずは、『○○の○○さん』といわれるようになりなさいと言っています。私であれば『クールビズの小池さん』といわれるように、政策の肩書をつけてもらえるようにと。得意分野をつくって徹底しましょう、とアドバイスを送っているんです」
国会議員として、地方議員として、そして都知事として……。日本全国で女性政治家たちの闘いは続く。