経済評論家の勝間和代さん(49)は、『断る力』(文春新書)など多くのベストセラーがあり、“勝ち組”になることを世の女性たちに説いて励ましてきた。
いっぽう、精神科医の香山リカさん(58)は、『しがみつかない生き方』(幻冬舎新書)などの著書があり、“勝ち組”になれない弱者の立場にやさしい言葉で寄り添った。
“情報を駆使して勝ち組になれ”、“いや、勝ち組になれない人だっている”――。相反する2人の論調は、’10年ごろ「カツマー×カヤマー論争」として世をにぎわせた。そんな2人が論争以来初となる“誌上対談”で語り合った。
8年がたち、勝間さんには驚きの報道があった。今年5月、勝間さんは、ニュースサイト「バズフィード・ジャパン」で、LGBT(=性的マイノリティ)のうちのレズビアンであることを公表しているアクティビストの増原裕子さんと交際・同棲していることを公表したのだ。
香山「今回の報道で、勝間さんはやっぱりすごいなあ、と」
勝間「えっ、どんなところが?」
香山「勝間さんって、本当に、その時代で、いちばん重要なことを体現しているんです。LGBTを取り巻く問題が注目されているときに『理解しましょう』ではなく『私がそうなんです』と告白した。常に自分を“主語”にして表現しているなぁ、と」
勝間「私はそのときどき、したいことをしているだけなんです。通勤時間の効率化を図るために昔からしていた自転車通勤も、後からブームになるとは思わなかった。最近、家に卓球台を入れたんですが、そのうち“家卓球”がブームになるかもしれない(笑)」
香山「勝間さんをみていると、私ってただ年を取っているだけだなぁって……。何の変化もなくて、弟に『金太郎飴みたいな人生だ』って言われちゃった(苦笑)。いまの50代以下の世代は、高齢者になったときへの漠然とした不安を抱えています。これから私たちや若い世代は、どのように生きていくべきですかね」
勝間「シンプルに考えましょうよ。私たちは、寿命が100歳くらいになる確率が非常に高くなっていきますよね。50歳であれば、『人生あと半分』をどう生きるかを具体化・最適化しましょうと」
香山「じゃあ私たちは、何歳まで働けばいいんですか……」
勝間「働くことがつらいと思うのは、『死ぬほど働かなきゃいけない』と思っているからなんです。70代、80代で“たらたら”働けばいい。1日9時間と言わず、2~3時間労働であれば、働いているほうが楽しいじゃないですか。楽しんで働いた報酬+年金で月に15万円ほどあれば、暮らせる。そんな未来を創造するほうが、幸せだと私は思います」
香山「なるほどねぇ。でも、みんながみんな、そんなにうまくいくものかなぁ」
勝間「1回、人のために生きるというのをやめてみればいいんです。『夫のため』とか『子どものため』と考えず、『私って何がしたかったんだっけ?』と問うてみてほしい」
香山「せいぜい『同窓会で不倫する』とかになっちゃいそうですけどね(笑)」
勝間「もっとささいなことでいいんです。晩ご飯のおかずも、夫や子どもに合わせていたのを、自分の好きなものに変えてみるとか。夫が脱ぎ捨ててある洋服なんかを、多くの妻は渋々洗濯するわけですよね。それを、自分で洗濯物入れに入れなければ洗濯しない。そうすればいいんです。もう我慢しないこと!」
香山「私自身は、いますごく我慢していることはないですが、自信があるかというとそうではない。40歳くらいのお医者さんが、『医学のAI化』について話していると、私は『ついていけない、終わった……』と思っちゃうし」
勝間「徳島県の高齢の女性たちが『葉っぱビジネス』(料理の「つまもの」として使う紅葉の葉などを栽培、収穫、販売する農業)で収入を得ているんです。それを始めたら、高齢の女性たちがあっという間にスマホやタブレットを使えるようになった。人間、目的と欲があれば、時代がどんなに移り変わってもなんとかなるんですよ」
香山「欲を捨てないこと、か……」
勝間「だって、徳島では、80代のおばあちゃんたちも60代の男性に指導されると、頬を赤らめるんだっていうんですから(笑)」
香山「じゃあ私も『欲』を持たなきゃ。じつはいま、在宅医療医を目指して勉強中なので、頑張ってみます!」