「いちばん信じていないのが自分の芝居で、(受賞は)本当なのかなという気持ちが正直なところです」
そんな挨拶で会見場を沸かせたのは、俳優・舘ひろし(68)。世界七大映画祭の1つ『モントリオール世界映画祭』で最優秀男優賞を受賞し、一躍“世界のヒロシ・タチ”となったのだ。
’76年に映画デビューして以来、長い俳優生活を歩んできた舘だが、本人が言うようにこれまで目立った受賞歴はなかった。それどころか自分を“大根役者”と信じ切っていたフシもある。つい最近のインタビューでも、彼は演技力について次のように語っている。
《あまり(俳優に)向いていないんじゃないかな。滑舌も良くないし、芝居も……。(中略)それこそ昔はひどくて、三行以上の台詞は覚えられなかった》(『週刊文春』’18年6月7日号)
業界でも“舘ひろしは台詞を3行までしか覚えられない”は、半ば伝説化している。しかし映画関係者は言う。
「いまや舘はクールな役から、枯れた役やコミカルな役まで、幅広く演じ分けることができる“名優”になっています。モントリオール映画祭の審査員たちも《主人公が人生にくたびれた人物から、モダンに変化していく様子が素晴らしかった》と評価しています。色気のあるダンディな雰囲気は彼の最大の武器でもありますが、滑稽で格好悪い演技もみせられるようになったことで、さらに際立つのです」
いまや68歳だが、その舘の“枯れない色気”を支えているのが、13歳年下の幸子夫人(55)なのだという。2人が結婚したのは22年前の’96年8月だった。当時、舘は46歳、幸子夫人は33歳。舘の語る結婚生活の信条は非常にユニークだ。
《僕みたいに結婚しながら恋している状態が心地いい奴もいるでしょう。僕は、もういつも恋をしていないとダメなのです。だから、結婚してからも、ちゃんと恋をしています。妻の心が広いのかな。というより、それを認めることが、彼女流の愛情表現なのかもしれません》(『婦人公論』’97年3月号)
なんと“浮気もOK”という幸子夫人。夫婦関係について舘の知人は言う。
「幸子さんは交友関係も広く、とても社交的な女性です。しかし舘さんの趣味であるゴルフや乗馬に付きあうことはしないようです。舘さんの持論は『夫婦は同じ趣味を持たないようにするべき』『夫婦の会話は意識的に減らす』なのですが、そういった舘さんが求めている“夫婦のベストな距離感”を保ってくれているのかもしれません」
もっとも夫婦関係が冷え切っているかといえば、そうではないようだ。東京都内の舘夫妻の自宅近所の住人はこう語る。
「近所でお二人がごいっしょに歩いている様子などはあまり見ないのですが、最近、都内のホテルのレストランで食事をしている姿を見かけました。とても仲睦まじそうで……」
前出の知人は言う。
「舘さんは仕事ではもちろん、プライベートでも“舘ひろし”を演じているのです。幸子さんは、そんな舘さんのいちばんのファンであり理解者なのでしょうし、舘さんも幸子さんのおかげで、彼独特のスタイルを貫いてこられたのだと思います」
“恋することを忘れない”世界的名優誕生の陰には、器の大きな夫人の存在があったのだ。