「医者に言われましてね、『少しボーっとする時間もとりなさい』って。でもね、脚本をおもしろくするために考えれば考えるほど、お客さんにドカンとウケるから、どんどん欲が出ちゃって」
そう語るのは、この夏、前立腺肥大症で入院した三宅裕司(67)。
「50~60代に多い病気だそうですよ」(三宅・以下同)
尿が出せない体のまま舞台に出続けた結果、約1カ月の入院生活を余儀なくされた。現在は主宰する「劇団スーパー・エキセントリック・シアター(SET)」の公演の稽古に精力的に臨んでいる。
医者が気にかけるほど寝ても覚めても笑いを追求しているのだ。ゲラゲラ笑えるステージをつくり出すために。
「長く続けてきたので、劇団員の年齢は20歳から67歳までと幅広くて、すべての個性を生かすのは至難の業。そこで、設定は定時制の工業高校しかない、と。小倉(久寛)が生徒の中にいても、不自然じゃないでしょう?(笑)」
というわけで、今年のタイトルは『テクニカルハイスクールウォーズ 鉄クズは夜作られる』(10月12~28日、東京・サンシャイン劇場にて)。
物語の舞台は、廃校寸前の下町の定時制工業高校。50代の会社員までいる幅広い年齢層の生徒が机を並べているが、都内で最低レベルのワルたちだ。三宅が演じる校長をはじめ、職員らは彼らを見捨てている。そんなやる気のない高校に熱血教師が赴任してきて……。
「見どころは、学校が潰れてしまえばいいと思っている校長役の僕と、老け顔の高校生役の小倉のかけ合い。僕は高校を卒業して50年。母校は全日制の男子校だったんですけど、今回“全日制”という言葉が出てくるたびにどうしても“前立腺”に聞こえちゃって(笑)。いやぁ、月日を実感しますよ」
高校時代の三宅は、落語研究会とバンドの活動に明け暮れたそうだ。
「好きな笑いと音楽をずっと続けてきたのが、SETにつながりました。なんと来年は結成40周年ですよ! 70歳に近づいた今、後続の喜劇人を育てて“ミュージカル・アクション・コメディ”のSETを継承していきたいんです」
今年、新たに「劇団こどもSET」を立ち上げた。大人の役者が演じた作品を、翌年、子どもたちが真面目に演じる。それだけで客席は爆笑の渦だ。今年の演目も、来年の夏には子どもたちが一生懸命演じることになる。
「40周年に向けて、僕も劇団員も全員が青春していますよ」