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「米国中間選挙では、上院で共和党が、下院で民主党が過半数を占める“ねじれ現象”が起き、下院でトランプ大統領(72)の政策・法案が通りにくくなりました。黄色信号がともった2年後の大統領再選に向けて、メキシコ国境の壁建設やTPP離脱などの際に使った“大統領令”という絶大な権限で、議会を通さず強引に政策を推し進めるでしょう」

 

こう予測するのは、第一生命経済研究所・首席エコノミストの永濱利廣さんだ。『日本が売られる』(幻冬舎新書)の著書もある、国際ジャーナリストの堤未果さんも、同様の意見だ。

 

「トランプ氏に対し、好き嫌いは大きく分かれますが、現実として米国内の景気が非常に好調で、生活が楽になったことへの評価は高い。他国に批判されようが、今まで以上にアメリカファーストを貫くはずです」(堤さん)

 

“強固な信頼関係”の同盟国・日本も、ターゲットになる。専門家に、今後の日本への影響を占ってもらった。

 

■日米2国間協議の影響で、コメが贅沢品に!?

 

間もなくはじまる日米2国間による通商交渉では、非常に厳しい条件をつきつけられそうだ。経済評論家の平野和之さんが語る。

 

「先の日米首脳会談で先送りされた日本車の輸入関税引き上げをチラつかせ、米国の穀物、牛肉の輸入量増大と関税引き上げを要求するはず」

 

ここでもっとも懸念されるのは、日本人の主食である、コメ。

 

「コメの種子は、開発に手間やコストがかかるため種子法で農家の開発費用は都道府県が負担していました」(堤さん)

 

ところが、この日本の主食を守ってきた種子法が廃止されたというのだ。開発費用の補助を失い、自力で種子を開発することが困難となれば、農家は民間から高価な種子を買うしかない。

 

「トランプ氏が推し進めているのは、コメの種子市場に、米国の大規模農場や、遺伝子組み換えや農薬開発などを手がけるバイオ企業を参入させることです。民間種子は開発費用も上乗せされるため、公共種子の10倍の値がつくケースもあります。米国がイラクやアルゼンチンなど他国で行ってきたように、国が守らず企業に主食をコントロールされるようになれば、コメは贅沢品になりかねません」(堤さん)

 

■高額医薬品を押しつけられて、医療費自己負担5割時代に

 

トランプ大統領は、TPPから離脱したことでビジネスチャンスを逸した、自国の医薬品メーカーの後押しもしていくという。

 

「日本は国民皆保険で、基本、医療費は3割窓口負担。残りの7割は保険料と税金ですが、医療財政は厳しい。財源不足に追い打ちをかけるように、トランプ氏は米国医薬品メーカーの、抗がん剤などの高額医薬品や医療機器をもっと日本に買うよう、強く求めてくるでしょう」(堤さん)

 

さらに、日本では2年毎に薬価が引き下げられるシステムだが……。

 

「日本政府は今、一定条件を満たす新薬に後発薬が出るまで薬価引き下げを免除しています。今後、トランプ氏はアメリカ製薬業界を代弁し、『新薬は一定期間ではなく無条件でずっと値段を下げるな』と迫ってくるでしょう」(堤さん)

 

日本の医療費財源を“食い物”にしようとするトランプ大統領。大きな負担となり、もはや「窓口3割負担」は維持できない。

 

「フランスでは病気の種類や、受診先によって負担率を変えています。日本も国の有識者会議で同様の案もあります。いずれ『風邪のような軽症の場合はドラッグストアの薬で十分対応。それでも病院で受診するなら、5割負担』という時代が来るかもしれません」(平野さん)

 

医療費の不安が、消費の落ち込みを招く可能性もある。これまで述べたようなトランプ大統領の「暴走」が続けば、景気が悪化する可能性も。来年は、5年に1度、公的年金の給付や負担の見直しが検討される「財政再計算」が行われる。

 

「社会保障費全体の財源が厳しくなるでしょう。発表されている受給額割り増しの代わりに、年金受給開始年齢を70歳まで遅らせる案を加速させます」(平野さん)

 

トランプ旋風は、日本も暴風域。安倍首相には、トランプ大統領と“お友達アピール”するばかりでなく丁々発止の交渉が求められる。

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