レンズを構える記者に向かってくるパーントゥ。この後、顔に泥を塗られた=10月、沖縄県の宮古島市平良島尻 画像を見る

 

沖縄県宮古島市の「パーントゥ」を含む8県10件の伝統行事で構成する「来訪神 仮面・仮装の神々」のユネスコ無形文化遺産登録が決定したことを受け、宮古島市では「島の誇りだ」「地域の活性化につながってほしい」などと喜びや期待の声が上がった。一方で、登録を受けた今後の行事運営や継承について、懸念を口にする地域の人もあった。

 

29日午後、宮古島市役所城辺庁舎に集まった島尻自治会の住民や市教育委員会の関係者はネット中継でユネスコの審査を見守った。登録が決まり、庁内は大きな拍手と歓声に包まれた。

 

泥を身にまとった来訪神が、人や物に泥を塗って厄払いする「パーントゥプナハ」が行われている市島尻の宮良保自治会長は「非常にうれしい。昨年は見送られたので、喜びもひとしおだ。今後は行政の協力も得て、継承のため地域に若者が戻ってくるような施策を講じたい」と語った。

 

同地区婦人会長の新里まつ江さん(61)は「島尻の誇りだ。登録は地域にとっての大きな節目になる」と話す。近年の観光客などの増加を踏まえ「地域にとっての『神事』という意味合いは変わらない。行事を見に来る人たちには、そうした点も理解してもらい」と要望した。

 

子どもがお面を着けてパーントゥに扮(ふん)し、集落内を厄よけする「サティパロウ」を行う市野原の渡久山隆野原部落会長は「野原にこうした行事があることはあまり知られていないので、登録を機に多くの人に知ってもらえたらうれしい」と期待した。

 

次回開催のサティパロウでツカサの補佐役である「供(とも)」を務める久貝たまえさん(56)は「後継者など、これから先のことを考えると手放しで喜ぶことはできない」と険しい表情を浮かべる。「行政機関なども交えながら、行事継続のための施策をきちんと考えなければならないと思う」と話した。

 

下地敏彦市長は「宮古島の祭祀(さいし)が、世界でも類を見ない文化遺産と認められたことの喜びをかみ締めている。各自治会も行事の運営にあたって継承や、見物客への対応などの問題を抱えている。市としても全力で支援していきたい」とコメントを発表した。

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