今年も多くの偉大なスターが、たくさんの思い出をわれわれに残してこの世を去った。そんな故人と親交が深かった方々から届いた、愛あふれるラストメッセージを紹介。題して、「大好きなあなたへ 最後のラブレター」――在りし日の姿に、心からの哀悼の意を表して。
■樹木希林さん(享年75・女優・9月15日没)へ。安住紳一郎(45・アナウンサー)
樹木さんが亡くなってから、残された言葉を探すようになりました。
新聞や週刊誌にも“樹木語録”の記事をよく見かけます。でもそこで見つけたのは「えっ、わたしの話で救われる人がいる? それは依存症というものよ」という言葉でした。
樹木さんと初めてお会いしたのは7年前。鹿児島でのロケでした。
「飛行機もホテルも車も、いっさい手配しないで。私、ジパング俱楽部の会員だから。メークもスタイリストもいらないわ。時間と場所だけ教えて」
自分でできることは何でもやる。そんな樹木さんの話のなかには、いつも“生身の言葉”があふれていました。名人落語家のように冗舌に語る“芸能界こぼれ話”には年の離れたスタッフも大笑い。
ロケが始まると「あなた、私に聞きたいことたくさんあるでしょ。何でも聞いていいわ」と。くだらない質問をすると「そんなこと本当に知りたいの? 違うでしょ」と言われてしまうこともありました。
そして今年5月には「樹木邸訪問ロケ」のお許しが。番組としてはこの上なくありがたい話でしたが、私は少し不安を覚えていました。まさか、その不安が現実のものになってしまうとは。樹木さんは、最後に私たちに手柄をくれたんだと、泣きました。
樹木さんの葬儀の日、東京には嵐が直撃。でも不思議なことに、葬儀の間は雨も風もやんでいました。千人を超えるファンの弔問があったにもかかわらず、最後の1人の焼香が終わるまで、祭壇に立ち続けた也哉子さんと本木さん。まるで映画のワンシーンのようでした。
葬儀はその人の人生を表すと言います。私はあんなに気張らずに洗練されたお葬式を見たのは初めてでした。
さようなら、樹木さん。