「日本人のなかにいると顔が濃いといわれるのでこういう役はあまり来なかったけど、イランの人から見ると自分は薄いほうなのかな」
そうおちゃめに笑った加藤雅也(55)。映画『二階堂家物語』(1月25日全国公開)で、名家の跡取りに生まれたがゆえの運命に翻弄される主人公・二階堂辰也を演じている。河瀨直美のプロデュースでイランの新鋭女性監督がメガホンを取り、奈良県天理市の緑豊かな美しい風景と共に描かれている作品だ。
「故郷の奈良でずっと映画を撮りたいと思っていました。俳優になって30年という節目の年に念願がかなったことに、ますます縁を感じました。改めて奈良のことを調べてみたら、今の名物は、なんとかき氷。春日大社の湧き水で作った氷は密度が高くて、蜜をかけても崩れないしおいしいんです」(加藤・以下同)
辰也は跡取り息子を亡くし、妻とも別れ、一人娘の由子と母の3人暮らし。由子に養子をとらせるか、自分が愛のない結婚をするかで迷う日々を送ることに……。
「人間って自分の子どもの幸せを祈りますよね。僕にも娘しかいないから、この先加藤家はつながらないんだな、という寂しい思いもありますが、無理やり娘に養子をとろうとは思いません。墓参りに来てくれたらいいかなってくらいですね」
放送中の連続テレビ小説『まんぷく』では、間違った英語を多用するユニークな喫茶店のマスターを演じている。
「起承転結の『転』の時期に入ったんだと思っています。これからは今までやってこなかった新しいことにチャレンジしていきたい。コロッケさんがやっているようなお客さんと対峙して作り出す面白いお芝居や、綾小路きみまろさんのようにマイク1本で楽しませるようなパフォーマンスなど。両方、難しいんですけどね」
端正な顔立ちでクールに見えがちだが、『まんぷく』のマスターさながら、本人も関西弁で明るく軽妙なトークを繰り出す。そして、55歳にしてスレンダーな体形を見事にキープしている。
「最後まで自分の足で立ってお芝居をすることも目標です。生活習慣でゆがんでしまった体を元に戻してから筋肉をつけて、ケガをしない体作りを。そのために足腰を強くするトレーニングをやっています。食生活はもうお肉がキツくなってきました。奥さんが魚を中心にした和食を作ってくれるので、外食はできるだけしないで、家に帰って食事をしていますね」