画像を見る

「自分で遺言を作成する場合、これまではすべてが自筆である必要がありました。しかし、1月13日に施行された改正相続法では、パソコンなどで作成した財産目録や通帳のコピーなどでも、本人が署名・押印したものであれば、認められるようになりました」

 

相続問題に詳しい弁護士の外岡潤さんはそう解説する。40年ぶりに改正された相続法。’20年7月までに順次施行されていく予定だ。

 

「新制度によって、これまで対象でなかった人が新たに相続の対象になったり、遺産の分割の選択肢が増えたりします。知らないと、損をしたり、トラブルになってしまうこともあります」(外岡さん・以下「」内は同)

 

それを防ぐには改正相続法の趣旨を理解すること。そして……。

 

「高齢の親御さんが健在のうちから、円満な遺産相続の準備をしておくべき。トラブル回避には、遺言書の作成がいちばん有効です」

 

それでは、読者から寄せられた事例を基に、“あなたが損をしない”相続の仕方を考えていこう。

 

【Q1】両親は再婚で、母親の違う没交渉の兄がいます。父の遺産を渡したくないのですが、どうすればいいでしょうか?(48歳主婦)

 

【A1】「被相続人(このケースは老いた父)の財産を相続する権利がある人を法定相続人といいます。法定相続人になれる人は、優先順に(1)配偶者、(2)子ども・孫など、(3)親などの尊属、(4)兄弟姉妹や甥姪……です。このケースでは法定相続人が、母と子2人(兄・私)。母は『2分の1』、兄と私には『4分の1』ずつが法定相続分として相続されることになります」

 

何もしなければ、父が亡くなった場合、兄に父の財産の4分の1が渡ることになるが……。

 

「重要なのが、遺言の有無です。遺言の内容のほうが優先されます。たとえば、〈全財産を妻と娘に相続させる〉という遺言を父に書いてもらうことが考えられます」

 

ただし、法律では法定相続人が最低限相続できる「遺留分」が認められている。

 

「もし兄が納得しない場合、法定相続分の半分(このケースでは8分の1)の相続は認められます」

 

それでも、この場合、遺言があれば、あなたの相続分を4分の1(25%)から8分の3(37.5%)まで増やすことができるのだ。

 

【Q2】近所に住むお義父さんの介護を、10年間手伝ってきました。なのに、離れて暮らす義弟と夫への遺産額が同じなのはおかしいと思っています。(58歳会社員)

 

【A2】「もし、法定相続人が介護をしていた場合は『寄与分』が認められることがあります。しかし、実子の配偶者であるこの方の場合は対象外です。介護の対価を遺産としてもらいたければ、義父に遺言書にその旨を書いてもらう必要があります」

 

生前に被相続人の介護や仕事の手伝いなどで、財産の維持・増加に貢献してきたことが認められた場合、ほかの相続人よりも多く財産を相続できる。これを『寄与分』というが、これまで妻や実子などの法定相続人に限られていた。しかし、7月1日以降は、法定相続人の妻も「特別寄与」を要求する権利ができる。

 

「しかし、寄与分の具体的な額は、相続人全員での話し合いで決めるうえ、介護などをした証拠を提示する必要が。明確な基準がなく、ケースバイケースですので、まとまらない場合も多いのです」

 

やはり生前に、「遺言を書いておいてもらう」のがベターだ。

【関連画像】

関連カテゴリー: