“絶対女王”の誕生に世界中が熱狂している。全豪オープンで日本人初の優勝を果たした大坂なおみ(21)。昨年の全米オープン優勝に続き、グランドスラム2連覇。さらにはアジアで初となる世界ランキング1位の快挙を達成した。だが、彼女は全豪優勝後のインタビューでこう語っている。
「世界ランキング1位は私のゴールではない。全仏で優勝したい。どのトーナメントでもいいプレーをしたい」
21歳ながら、次々と歴史を塗り替えていく大坂。そんな彼女は今“大きな決断”を迫られている。
「ハーフである彼女は現在、日本とアメリカの国籍を持ついわゆる二重国籍です。日本の法律では、今年10月に迎える22歳の誕生日までにどちらかの国籍を選択しなくてはなりません。法的な罰則自体はないので、なかには二重国籍のまま生活する人もいます。しかしスポンサー契約も多く抱える大坂選手は、どちらかに決める必要があるでしょう」(日本テニス協会関係者)
これまでも「日本代表として東京オリンピックでプレーして金メダルを獲るのが夢」とたびたび語ってきた大坂。しかし、夢の実現には大きな壁が立ちはだかっている。アメリカの税制だ。日本国籍を選択することで、実に多くのデメリットが出てくるというのだ。日米公認会計士兼日米税理士で国際会計アドバイザーも務める福留聡さんはこう解説する。
「アメリカは日本と同じ累進課税制ですが、いちばん高いところでも37%。地域によっては最大で55%になる日本と比較してもその差は一目瞭然です。さらに大坂選手が生活しているフロリダは州税もありません。日本にも控除はあるとはいえ、納税額だけ見るとアメリカに住んでいるほうがいいでしょうね」
問題はそれだけではない。大坂が日本に移住した場合、多大な損失が発生するという。福留氏は続ける。
「アメリカには国籍離脱税という制度があります。米国籍を放棄してもアメリカに居住しているのであれば、所得税が発生するので問題ありません。ですが、別の国に移住する場合は課税対象となります。課税額は全財産を時価評価したものと、減価償却したものとの差額に対して最大で23.8%発生する計算です。つまり、今ある財産をすべて売った場合の金額に税金が発生するということです。大坂さんの場合は、大会の賞金も含まれるので相当な額になるでしょう」
これまでの大会賞金やスポンサーとの契約料を合わせると約40億円ともいわれる大坂の収入。つまり彼女が日本を選ぶことで、約10億円という大金を支払う可能性が出てくるのだ。大きな代償と背中合わせの大坂。それでも、彼女はすでに日本籍を決心した。
「大坂選手は昨年の国別対抗戦に日本代表として出場しています。オリンピック憲章では、1つの国の代表となった選手は、3年間が経過しないと他国の代表になれないという決まりがあります。つまり、東京オリンピックに日本代表として出場することが決まったと言っていいでしょう。なにより、彼女は日本の文化が大好き。日本人ラッパーの曲を何度も聴いて、日本語の勉強をしている姿は大きな話題になりました。全豪中に更新したSNSでは、鎌倉にある竹林に行った様子を紹介していました。また、今年に入ってから大坂選手が『おじいちゃんの住む根室に行きたい!』とうれしそうに話していたそうなんです」(スポーツ紙記者)
そして、今回の決意には大坂が駆け出し時代から抱いてきた思いも影響しているという。
「大坂選手はジュニア時代にたくさんアメリカの大会に出場していましたが、成績はいまひとつでした。ご両親はアメリカのテニス協会に支援を要請しましたが、取り合ってもらえなかったそうです。そんなとき、いち早く彼女の才能に気づいたのが日本テニス協会の吉川真司コーチ(41)でした。協会に掛け合い日本での練習場所を確保するなど、熱心にサポートしてきました。そうした支えを糧に、彼女は目覚ましい成長を遂げていった。いっぽうアメリカ側は彼女が活躍し始めた途端に多額の援助を申し出たそうなんです。大坂選手はそうした対応の違いを忘れていませんでした。だからこそ日本代表として活動することを選んだそうです」(前出・スポーツ紙記者)
開催まであと1年となった東京オリンピック。大坂は、日の丸を胸にそのコートに立っていることだろう――。