話題のスポットやエンタメに本誌記者が“おでかけ”し、その魅力を紹介するこの企画。今回は3・11をベースにしたドキュメンタリー映画『盆唄』を見てきました。
■映画『盆唄』(テアトル新宿ほかにて全国公開中)登場人物は福島県双葉町の旧住人、横山さんと仲間たち。双葉町は帰宅困難区域に指定されているため、町民は故郷を離れて暮らしています。そんな事情から横山さんは先祖代々からの伝統『双葉盆唄』の存続に危機感を抱くように。
ある日、ハワイの日系人社会で100年以上前に福島からの移民が持ち込んだ『フクシマオンド』がいまだに演奏されていることを横山さんは知ります。双葉盆唄を受け継いでもらえるかも、そう思った横山さんらはハワイへ飛び双葉盆唄を披露。それを受けてフクシマオンドの唄い手である日系3世の女性は「双葉盆唄を続け、いつか双葉に返したい」と語ります。
土地ならではの伝統芸能は、その土地に住む者が継承していかなければ途絶えてしまいます。双葉町の住民はその点で継承する場さえなくしているのですが、町を思う強い気持ちが人々にある限り双葉盆唄が消えることはない、そんな気がしました。それは福島からハワイへ渡った人々の子孫が、自分のルーツとなる故郷への思いを、フクシマオンドを忘れずにいることからでもわかります。
本作は震災の被害にくじけることなく、自分の中にゆるぎない故郷を持つ人々が登場することで、希望さえ感じられる作品でした。
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