トークイベントで働く人の現状などについて語る筆者=2019年3月、沖縄県立図書館 画像を見る

 

早いものでもうすぐ、4月。新卒採用に限らず、「新人さん」が入ってくる!という企業が多いかと思います。

 

ただでさえ人手不足の昨今。未経験の新人さんとは言え、貴重な人材。もちろん、最初から即戦力とはいかなくても、大事に育てて、力になってもらいたいですよね。

 

◇執筆者プロフィル

 

小宮 仁至(こみや ひとし) ファンシップ株式会社 代表取締役

 

広告会社やWEBマーケティング会社を経て、2015年にファンシップ(株)を創業。2016年より「レンアイ型採用戦略」を提唱し、企業へのセミナーや求職者への採用支援を実施している。1979年生まれ 熊本県出身。うちな~婿歴10年の2児の父。

 

私は採用コンサルタントとして、日々、沖縄県内の中小企業の経営者や採用担当者から相談を受けたり、採用のお手伝いをしたりしています。その中で、「若手が定着しないで困っている」というお悩みは、本当に多いです。

 

最近では20人~30人規模の組織で、年齢構成が40代~60代に偏っていて、

 

「一番若い社員は8年前に入った36歳の〇〇さん」

 

という状況がよくあります。

 

こういう会社も、今まで10代や20代が全く採用できなかったわけではなく、何人か入ってはきたけれど1年未満で辞めていってしまい、全然定着しなかったという場合が多いのです。

 

あまりに定着しないので、「最近の若者不信」が組織的に強まり、入ってきた新人さんに対して「どうせ、お前もすぐ辞めるんだろう…」という雰囲気を醸し出してしまい、新人さんの居心地が余計に悪くなる…という負のループに陥っています。

 

どんな事業でも若い新人さんが入社しないと続きません。

 

「仕事はあるんだから、今から入ってくれたら将来は幹部候補なのに…」

 

「あと10年したら社員の平均年齢が60代になってしまう!」

 

全社員の年齢を表にした用紙を手帳に挟んでいる社長さんなどは、本当に真っ青な顔で相談にいらっしゃることもしばしばあります。

 

働き続けている人に聞いてみる!

 

逆の立場で物事を見てみましょう。
私のコンサルティングでは「定着している社員」に時間をもらい、個別ヒヤリングをしてその中から「その会社の採用ブランド」を発掘するという作業があります。

 

社長が会議室に若手を呼び出して

 

「うちの会社の良いところや働きやすいところを答えなさい」と言ったって、本音は話してくれません。

 

恋愛に例えると、長年連れ添ったパートナーに突然、
「俺の良いところ、好きなところを言いなさい」と聞いているようなものです。

 

「あんた、突然、何言いだすの!?」って、取り合ってもらえないですよね??

 

そこで、私のような外部の人間がリラックスした雰囲気の中で、ざっくばらんに聞いていくのです。すると、沖縄で働く若い新人さんの「リアル」に触れることが多々あります。

 

3社目で「化けた」Aさんのケース

 

現在は10人以下の電気工事会社で働くAさん(26歳)のケースをご紹介しましょう。

 

(1社目。指導なしの現場管理)
Aさんは高校卒業後、ある塗装業の会社に入社しました。1年くらいは、いろんな現場や下働きをして、彼になりに頑張っていたそうです。ある日、上司から頑張りを認められたのか何のか、ある現場の監督を任されたそうです。

 

初めて任された現場。それまでは「現場の管理」はやったことがなく、当然しばらくは先輩や上司について教えてもらうものだと思っていたそうです。いや、そうじゃなかったとしたら、何をすればいいのか、分からないくらい、何も教わってなかった業務だそうです。

 

結果として、その日の現場に上司は来なかったそうです。電話をしてもつながらない。現場にはAさんの指示がないと動けない7人の作業員さん…。その日は会社にいる人にとにかく電話をかけまくって、携帯片手に1日を乗り切ったそうですが、結局その日、上司は現場に来ないまま…。

 

この日、Aさんはこの会社を辞める決意をしたそうです。

 

(2社目。教えないのに手を出す上司)
次の転職先の製造業の会社でも、ろくに作業を教えてくれない工場長(30代半ば)に「まだこんなこともできないのか!」と、毎日のようにいじられたそうです。工場長はジャレているつもりだったかもしれませんが、結構強めに手を出してくることなどが嫌で、ここも数カ月で退職しました。

 

(3社目でようやく「当たり前の会社」に)
その後、現在の電気工事会社に入ったのですが、ここは「先輩や上司が仕事を教えてくれた」そうです。Aさんにとっては3社目にして初めて「当たり前のことを当たり前にやってくれる会社」だと感じたわけです。

 

ちなみにこのAさん。教えてさえもらえれば、仕事を覚えるスピードが速い優秀な方なんです。だからと言って何から何まで先輩に聞こうする「かまってちゃん」タイプでもありません。

 

「まずは先輩の仕事を見る。それでも分からないことは、現場からの帰りの車中で聞いたりしています」

 

「お昼休憩の時間は、休憩時間とはいえ勤務時間。本や資料を読んで、少しでも成長しようと心掛けています」

 

なんて、ことを話す青年です。

 

実際、26歳にして、この会社の現場監督だけではなくお客さまとの打ち合わせなど、社長曰く「ほぼ一人前」なのだそうです。

 

本人も自分が気になったことは、調べて理解したいタイプ。仕事に限らず知らないことを知っていくことは好きらしいです。元々そういうタイプの人なんですね。

 

さて、このAさん。過去の2社の経験があったから、今こんなに優秀な人材に育ったのでしょうか? もちろん、そういう部分もあるでしょう。

 

ですが、過去の2社では
「最近の若いやつは1年も持たずにすぐ辞める」と評価されているかもしれません。

 

全く同じ人でも環境さえ違えばAさんのように大化けすることがあります。

 

いや、このAさん自身は「化けた」つもりはないでしょうね。本当にちょっとしたボタンの掛け違いやコミュニケーション不足が重なり、優秀な人材であったかもしれない新人さんが1年未満で辞めてしまう現象が、今日も沖縄中で起こっているのです。

 

このように採用は恋愛に置き換えると本当に分かりやすくなります。男女の別れた理由も同じですよね? どちらか一方の側からだけ見ていると真実は見えてきません。友人の離婚話なんかも、そう。どちらか一方だけの話を聞くと、

 

「そんな男、早く別れて正解よ!!」なんて言っちゃいがちですが、実際はけっこうお互いさまだったりしますもんね。

 

「キミじゃないと!」と信じること

 

さて、ではこの春。皆さんの会社の入ってくる新人さんにはどう接すればいいのでしょう?企業や職種によって、育成や定着の手法は違います。なので、私はどんな企業に対しても「新人には丁寧に教えてあげましょう」と言いたいのではありません。

 

そうではなくて、どんな新人に対しても共通して伝えてあげたいことは1つだけあります。

 

それは…
「うちの会社の新入社員はキミじゃないとダメなんだ!」

 

というくらいの大事に想う気持ちです。

 

以前の新人さんが1年未満で辞めていようが、どんな酷い辞め方をしていようが、今度、入ってくる新人さんには一切関係のない話です。

 

どうか新しい気持ちで、期待もいっぱいしてあげて、大切に大切に付き合おうという気持ちで接してあげてください。

 

「どうせ辞めるんだろうけど、この急場をしのげれば誰でもよかったんだ」

 

なんて、雰囲気は間違っても絶対に出さないでください。
そんな会社の雰囲気が新人さんに伝わり、最初の溝を生んでいるのですから。

 

「結婚生活は半目をつむれ」なんてことも言います。次に入ってくる新人さんも最初はやっぱりミスはするでしょう。それでも大切に育てれば、会社にとってなくてはならない存在になる! まずは本人よりも周りがそう信じてあげること。この雰囲気こそが、新人を「化けさせる」唯一にして最大のポイントです。

 

執筆者プロフィル 小宮 仁至(こみや・ひとし)
ファンシップ株式会社 代表取締役

 

http://www.funship.jp/

 

「レンアイ型採用コンサルタント」「レンアイ型就転職コンサルタント」として、商工会議所など公的機関でのセミナーを随時開催し、2016年以降300社以上が受講。就・転職者向けセミナーや個別相談300件以上、中小零細企業向けの採用コンサルティングでは個別相談企業100件以上、契約企業で6カ月以内の採用成功率は87%。沖縄県商工会議所連合会エキスパートバンク登録専門家、沖縄県産業振興公社登録専門家。1979年生まれ 熊本県出身 2002年より沖縄移住。うちな~婿歴10年の2児の父。

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