「イチロー、いままでありがとう!」
「お疲れ様!」
米シアトルに帰るため成田空港に現れたイチロー選手(45)に、ファンたちが温かな声援を送った。軽く会釈しながら歩く彼の少し後ろには、黒いジャケットを着た妻・弓子さん(53)の姿があった。
前日の3月21日に28年にわたる現役生活の引退を発表したイチロー。会見では弓子さんへの献身について次のように語っている。
「(妻が)いちばん頑張ってくれたと思います。僕はアメリカで結局3千89本のヒットを打ったんですけど、ホームのときに食べるおにぎりを、妻が握った数がおよそ2千800個くらいだったんですよ。僕はゆっくりする気はないのですけれど、妻にはゆっくりしてもらいたいです」
元TBSアナウンサーの弓子さんとイチローが結婚したのは’99年12月。2人は結婚20年目を迎えている。スポーツ紙記者は言う。
「会見でも話題に上ったイチローが試合前に食べる“おにぎり”ですが、チームメイトたちは“スペシャルなおにぎり”と呼んでいます。イチローが好んでいるのは、のりナシのおにぎり。のりを巻いて時間がたつとシナっとするのがイヤなのだそうで、さらに自分で巻くのも『ストレスになる』と、言っています。弓子さんが玄米を機械で精米したお米で握るという、まさに特別なものなのです」
ちなみにイチローが弓子さんお手製のおにぎりを食べていることが報じられたのは結婚2年目、シアトル・マリナーズへメジャーリーグ史上初の日本人野手として移籍したばかりの’01年2月ごろ。
弓子さんはそれ以降、黙々と18年間も握り続けてきたというのだ。ストイックなことで知られるイチローだが、弓子さんのストイックぶりも負けず劣らずだ。前出スポーツ紙記者が続ける。
「イチローといえばバッターボックスで袖を引っ張りながら、バットの先端をバックスクリーン方向へ向ける仕草が有名です。これは彼にとって最高のパフォーマンスを保つための“ルーティン”なのですが、試合前のおにぎりのみならず、彼の日常生活は5分刻みのスケジュールや膨大なルーティンで占められています。例えば昼食を摂るのは球場に出かけるぴったり30分前とか、トーストを焼くのはきっかり2分30秒とか……。それらの習慣を緻密に計算しながら家事をこなさなければいけない弓子さんの労力は大変なものだと思います」
“夫が会社の飲み会で今夜は夕食を作らなくていい”といった、一般の主婦のささやかな喜びも、弓子さんにはなかったという。
「イチローは遠征先から帰宅したときも、それが何時であっても自宅で食事を摂るそうです。たとえ深夜や明け方でも、帰宅時間を予測して、絶妙のタイミングで食事を並べなければいけません。メニューも8品とか9品というのですから、弓子さんにとって食事作りはまさに“真剣勝負の場”だったのです」
今後はマリナーズの幹部を務めると見られているイチローだが、会見では将来の進路を明確に示していない。
「ただイチローも弓子さんもシアトルを非常に気に入っていますので、当分はアメリカでの生活を続けるようです。イチローが“息子”と呼んでいる愛犬・一弓も今年17歳、人間でいえば100歳近くの老齢です。老犬にとって引っ越しなどの環境の変化は大きなストレスになりますから、一弓のためにもシアトルから離れないでしょう」(イチローを知る野球関係者)
高齢の息子の介護に新しい夢を追うことになる夫のサポート……。はたしてイチローが会見で言ったように、弓子さんはゆっくりした日々を過ごすことができるようになるのだろうか。