1961年の放送開始から、58年間、女性の生きざまや社会が抱える問題を描いてきた朝ドラ。すべてのドラマに、「あっ!」と驚くようなトリビアが隠されている――。
「NHK朝ドラは多くの作品で、“女性の生きざま”を描いてきました。民放のドラマと違うのは、視聴者が主人公と自分を重ねて見るのではなく、“おとなりさん”“ご近所さん”感覚で見守っていることです。お茶の間で見ていても疲れない、ほどよい距離感が、100作も続いてきた要因のひとつでしょう」
そう語るのは40年にわたりNHK連続テレビ小説(以下=朝ドラ)を見続けているドラマウオッチャーの田幸和歌子さん。4月1日スタートの『なつぞら』は通算100作目。58年の歴史で生まれた数々の“特ネタ”を、田幸さんとともに振り返ってみよう。
【1】“視聴率王”『おしん』
朝ドラ最大のヒットは31作目『おしん』(’83年)。最高視聴率69.2%という驚異的な記録だった。
「明るく前向きなこれまでのヒロインの定番とは違っていましたが、豊かになった日本人が忘れていた物の大切さや清貧を描き、作中で食べていた白米に大根をまぜただけの“大根めし”もブームになりました」(田幸さん・以下同)
世界60カ国と地域で放送され、なかでもイランでは最高視聴率90%超を記録。当時の最高指導者ホメイニ師を抜いて、“最も尊敬する人”におしんが選ばれた。
【2】『ロマンス』で初の主題歌
初めてオープニングの主題歌に歌詞がついたのは、32作目『ロマンス』(’84年)から。主役の榎木孝明(63)が歌い上げた。
その後、『ひらり』(’92年)にはDREAMS COME TRUEの『晴れたらいいね』、『春よ、来い』(’94年)には松任谷由実(65)の同名の曲が採用されるなど、次第に人気アーティストが主題歌を手掛けることに。
【3】吉永小百合の出演は“脇役”
新人女優が演じることが多いヒロインは、オーディションで決まることも多い。中越典子(39)は5度目の挑戦で『こころ』(’03年)のヒロインに抜擢され、女優として活躍するきっかけを手に入れた。
日本を代表する女優・吉永小百合(74)は、意外にも朝ドラのヒロイン経験はゼロ。出演は『鮎のうた』(’79年)で主人公の母親役を演じたのみ。
【4】『ゲゲゲの女房』が変えたヒロイン像
2作目の『あしたの風』(’62年)以来、48年ぶりに放送開始時間が変更となった『ゲゲゲの女房』(’10年)。
’90年代半ばから『ゲゲゲの女房』以前の朝ドラは、ヒロインの自分探しや内面の葛藤が描かれるばかりで、15分の中であまり物語が動かず、視聴者も離れていったと田幸さんは語る。
「さらに、放送時間が朝8時に早まったため、初回視聴率は歴代最低の14.8%を記録……。しかし、松下奈緒(34)が演じたヒロインは、これまでのように自ら道を切り開くヒロインとは違い、天才肌の夫を静かに見守り才能を開花させる“サポーター型”でした。このヒロイン像が共感を呼び、視聴率は右肩上がりに。このヒロイン像は、『マッサン』(’14年)や『まんぷく』にも受け継がれていきます」
【5】おかえりヒロイン・宮崎あおい
『まんぷく』でヒロイン福子の夫・萬平を救う弁護士を演じた菅田将暉(26)は、『ごちそうさん』(’13年)以来、5年ぶりの出演だった。
「最近では、ヒロインの再出演にも注目が集まっています。『純情きらり』(’06年)でヒロインを務めた宮崎あおい(33)が、『あさが来た』(’15年)でヒロインの姉役を好演していましたよね。これをきっかけに『まんぷく』の松下奈緒もそうですが、4月から始まる『なつぞら』には『おしん』の小林綾子(46)、『ひまわり』(’96年)の松嶋菜々子(45)が朝ドラに戻ってくると話題です。マニアにはたまらないこのブームは、まだまだ続くと思いますよ!」
100作目の『なつぞら』には、まだまだ驚くようなさまざまな仕掛けが用意されているに違いない。