鉄拳「自分のやりたいことが仕事になるというのはいちばんいいこと。初めてパラデル漫画を見たとき、震えましたよ。パラパラ漫画の単なる進化というよりも、パラパラ漫画とストップモーションアニメ、両方合わさった進化っていう感じがして。粘土も使ったり。これどうなってるの? 全然わかんない! ってビビりました」
本多「うれしいです! 僕、鉄拳さんのこと、大師匠と思ってますから。自分が漫画を描くようになってあらためて鉄拳さんの漫画を見ると、背景もびっちり描いてる作品とか、ストーリー性とか、すごすぎてしびれます」
イラストが紙から飛び出すパラデル漫画で話題の芸人、本多修(35)。フリップネタからパラパラ漫画中心の活動にシフトし安定の人気を誇る、鉄拳(46)。2人の芸人漫画家が初共演で初対談! 絵を描く道を進むことになったきっかけ、苦労、今後の目標を語り合った。
鉄拳「’11年の大震災の後、僕は一発屋ということもあって仕事が全然なくて、マネージャーに『吉本辞めます。仕事辞めます』って言ったんです。そしたら、もともとフリップに絵を描くネタをやっていたので『パラパラ漫画を描く仕事はどうか?』という話がきて。『振り子』という作品が話題になってからは途切れずに依頼が続いています」
本多「僕はコンビで活動してたんですけど、1年半くらい前に寝坊して仕事関係の方に迷惑をかけてしまい、3カ月謹慎をいただいて……。その間に絵が好きなので描くようになったんです。パラパラ漫画と現実のものをミックスさせたら面白いかもと思って、2分くらいの短いものをツイッターに載せたらバズったという。おかげさまでバイトも辞めて。人生ガラッと変わりました」
鉄拳「今は1日どのくらい描いてる?」
本多「夜にひたすら描いてます。締切り前だと1日10時間くらい。1作品2~3週間で完成って感じで」
鉄拳「僕も夜型。やっぱり10時間くらいやってて、でも1時間に1回休憩入れてるので、実質8時間くらいかな。2~3カ月で1作品完成。もうほとんど出かけず、ずっと家にいます。ひたすらコタツ机に向かってます」
■作品を生み出すそれぞれの方法
本多「依頼があるときは、テーマとか尺があるのでそれに合わせて考えるんですが、鉄拳さんはどうですか?」
鉄拳「尺はあまり決まってないことが多いんですが、大まかにストーリーを指定されることもあります。だいたい僕の場合は感動系が多いですね。息子が反抗期を経て大人になって親の大事さがわかるようなパラパラ漫画描いてもらえませんか? みたいな」
本多「僕はオチをおまかせされることが多いので、描き始めてからこうしようああしよう、って決めていきます」
鉄拳「パラデルの技法はまさか独学?」
本多「はい。自分で考えてます」
鉄拳「え……自分で!? どうしてそんなに頭がいいんですか?」
本多「やりたいイメージはあるけど最初はわからなくて、やっていくうちに徐々にできるようになりました。iPadを使うんですけど、まずは何枚も描いて、それを撮影して、加工します」
鉄拳「加工って?」
本多「イラストアプリに移動させて、また描く、みたいな」
鉄拳「いや、その時点で意味がわからない。ヤダ進化。ホントついてけない(笑)」
本多「僕は背景を描かないので、写真や粘土と組み合わせたりして特徴を出してます。鉄拳さんみたいに一枚一枚人物や建物の角度を微妙に変えていける画力がないですから」
鉄拳「パラパラ漫画のよさってそこしかないんですよマジで。アニメーションは進化してて、1秒間に12枚とか20何枚とか使ってますよね。僕の場合は1秒6枚なんで、ただの退化(笑)。手塚治虫先生や、昔のアニメーターさんがやってたことを僕もやってるだけなんです。パラデル漫画は当分の間は誰もマネできないんじゃないかな。出てくるキャラもいい味出してるよね」
本多「感動的なストーリーは描けないので、パラデル漫画を愛してもらうのは難しいって考えたんです。そこでキャラクターがいるといいんじゃないかと思って、ぱらおとぱらみを作りました。僕の家に住んでる設定でツイッターでコメントさせたりしてます」
鉄拳「ツイッターでつぶやく話を考えて何時間もたっちゃう僕と大違い(笑)」
■漫画家として――苦労と楽しみ
鉄拳「描き直しはやっぱりつらいです。ほぼ描き終わったところで服を替えてくれと言われて、100枚くらい描き直したこともあります」
本多「つらすぎますね。僕はアイデアが浮かぶまでサウナに入るとか、自分との闘いがけっこうあります。描き直しじゃないですけど、後半10秒だけ12パターン違うのを作ってって言われたときは! 死にそうでした」
鉄拳「『10秒くらいの一つお願い』とか軽く言ってくるからね!」
本多「鉄拳さんのは10秒増やすだけで60枚増える!」
鉄拳「60枚で2~3日はかかる(笑)」
本多「絵を描くこと自体が好きでよかったですけどね。ぱらおとぱらみには生きてるかのように愛着わいてますし」
鉄拳「そう、描いてるだけで楽しいんですよね。特に始めたころはハイテンションで頑張っちゃう(笑)」
本多「はい! 今僕まさにそうです」
鉄拳「今後の目標ってありますか?」
本多「鉄拳さんの漫画と僕のぱらおとぱらみがコラボできたら最高です!」
鉄拳「それ最高! オリンピック関連の作品とかやりたいですね! あ、でも本多さんにだけ依頼がきたとしたら……そのときは声をかけてくださいよ!」
本多「いやもちろん、鉄拳さんに依頼がきたときにもお願いしますよ!」