インバウンド(訪日旅行)ブームが続く沖縄で、海外ではなじみが薄い飲食店の「お通し」をめぐるトラブルが相次いでいる。「注文していない」と店員に怒りをぶつける観光客がおり、外国人向けに多言語の注意書きを用意するなど、店側は対策を講じている。料理や食事マナーを解説するガイドを派遣するサービスを提供する業者も登場した。日本の食文化を理解してもらおうと飲食店側は工夫を凝らしている。
建て替え工事に伴って仮店舗に移転した第一牧志公設市場近くにある那覇市松尾の居酒屋「若獅子WAKASHI」は今年1月、お通しに関する注意書きを常備した。「全てのお客さまから500円ずつテーブルチャージを頂いております。テーブルチャージには、お通しの料金が含まれています」という内容を、日本語のほか、英語、中国語、台湾語、韓国語で記した。
店主の渡嘉敷翔太さんは「外国人観光客の方からお通しに関する苦情を受けることが多かった。トラブル防止のために用意するようにした」と明かす。
2017年4月にオープンした同店には開店当初から1日平均3~4組のペースで外国人観光客が訪れている。料理を堪能して店を後にする客がほとんどだが、日本独特の商慣習である「お通し」をめぐってクレームを付けられることも少なくなかった。
「支払い時に『注文してない』と怒り出したり、インターネットの評価サイトに不満を書き込んだりする人もいた」と渡嘉敷さん。注意書きを置くようにしたところ、目立ったトラブルはなくなったという。
「株式会社ゆたしく」(那覇市山下町)では、飲食店からの依頼を受けて英語や中国語、韓国語など多言語に対応したガイドを派遣するサービスを展開する。広報担当の仲里信秀さんは「通訳だけでなく、料理の解説やその文化的背景などもレクチャーしている」と説明。同社のサービスを利用するすし店「鮨処もとい」(那覇市西)店主の松田基さんは「ガイドさんが解説してくれることで、『寿司』という食文化そのものを堪能してもらえる」と満足げだ。
沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)が運営する「多言語コンタクトセンター」にも「お通し」に関する苦情相談は寄せられているといい、同センターが翻訳支援などの対策に乗り出している。
官民一体となって海外での沖縄人気を盛り上げる取り組みが続いている。
(安里洋輔)