沖縄県内8離島にある黒糖(含蜜糖)製糖工場が3247トンの在庫を抱えていることが30日、県黒砂糖工業会(西村憲代表理事)のまとめで分かった。県産黒糖の生産量が3年連続で9千トン台で推移するのに対し、国内の需要は年7千~7500トンにとどまっていることから過剰生産の状態となってしまっている。安価な輸入黒糖や、粗糖(ザラメ)と糖蜜を混合した加工黒糖にシェアを奪われ、県産の純黒糖の販路が伸び悩む状況がある。需給バランスを考慮すると約8千トンの生産量が望ましいとされるが2018―19年産の県産黒糖の生産量は9131トンだった。
同会によると、近年の豊作もあり県内八つの黒糖工場の保管する在庫は3247トン、県外の流通業者も9218トンの在庫を抱える。
県黒砂糖工業会の本永忠久専務は「在庫を抱えることで製糖した黒糖が売れず、工場の経営に響く。サトウキビの増産で農家も糖業者も喜べる制度の構築が必要だ」と指摘する。
同会の13年の調査によると、県産黒糖の約8割が菓子類やパン、加工黒糖原料などの加工用に使われている。一方、県産黒糖のキロ単価が250~260円なのに対し、タイ、中国、ボリビアが中心の輸入黒糖はキロ単価200円を切ることが多い。JAおきなわのさとうきび振興部の兼城次男部長代行は「加工すれば味に差が出づらく、特別なこだわりがない限り安く大量に手に入る輸入黒糖を選ぶ業者が多い」と輸入物と競合する厳しさを解説する。
海外への販路拡大を目指す取り組みもあるが、「純黒糖」と「加工黒糖」の差別化が曖昧なため、県産黒糖の苦戦が見られるという。加工黒糖は黒糖に白砂糖の原料である粗糖と糖蜜を加えた加工製品を指す。わずかでも県産黒糖が含まれていれば「沖縄県産」とうたうことができ、サトウキビのみで作られた純黒糖との差別化がされていない。
兼城部長代行は海外への販路拡大が進まない要因について「『沖縄県産』と書かれていれば、海外の人は数%しか県産黒糖が使われていない加工黒糖でも手に取ってしまう」と話す。
白砂糖の原材料となる分蜜糖の製糖工場は国の糖価調整制度に基づき、生産コストと収入の差額に加え、サトウキビ代の8割を補助される。兼城部長代行は「白砂糖は必需品、黒糖は嗜好(しこう)品という考え方が背景にある。黒糖にも分蜜糖並みの制度を作る必要がある」と話した。