「早ければ衆議院選挙が1年以内、3年後に参議院選挙があります。なるべく早く与野党をひっくり返したい。生活が苦しくて日々クビが絞まっていっている人たちを、もう放っておけません。国が壊れていくスピードは待ってくれない。だから政権をとりにいきたいんです。そのためには、次の衆院選で100人の擁立を目指します」
そう決意を語るのは、「れいわ新選組」の代表で前参議院議員の山本太郎氏(44)。秋から、全国を2カ月くらいかけて回り、候補者選びにつなげたいと意気込む。
山本代表は、俳優だった’13年、参議院選で東京選挙区から無所属で出馬し、初当選。その後、「自由党」の共同代表として活動してきたが、今年4月1日、政権をとるため、たった一人でれいわ新選組(以下、れいわ)を旗揚げした。
7月の参議院議員選挙では、派遣切りにあったシングルマザーなど、さまざまな問題の当事者9人の候補者を擁立。〈消費税の廃止〉〈最低賃金1,500円〉など社会的弱者に寄り添う政策を打ち出し、2議席を得る大躍進をとげた。
「生産性で人の価値を測られない社会にしたい」という思いから、政党が優先して当選者を決められる特定枠に、筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の舩後靖彦さん(61)と、重度障害者の木村英子さん(54)の2人を指定。両名とも当選を果たした。
結果的に「れいわ」は、得票率4.55%で政党要件を満たす。ネットを中心に支持を集め、4月から約3カ月間で4億円を超える寄付も集めた。山本代表は比例で99万票を得ながら議席を失ったが、党代表として活動することに。
“れいわ旋風”を巻き起こし、政権を取ると宣言した山本代表は、何を目指すのだろうか。
「6年前に議員になってから、街頭で話すことをずっとやってきました。いちばん興味を持って聞いてもらえたのが、生活に直結する“雇用”や“税金”の話だった。反応が、飛び抜けてちがうんです。それだけ厳しい状況に置かれている人が多いんだ、と実感しました」(山本代表・以下同)
街宣が終わったあとは、決まっていろんな問題の当事者から話しかけられた。
「あるとき、40代の男性が来られて、こう言われました。『ブラック企業に勤めて、身も心もボロボロになりました。いまは生活保護を受けているけど、とても社会復帰できそうにないから不安だ』と。その方は私と話す間も、ずっと手が震えているんです。ほかにも、ちゃんとした大学を卒業したのに、非正規の仕事しかなくて、いまは日雇いの運転手だという方もいた。地方に行けば、『賃金が安すぎる、人がどんどん都会に出ていく』と。とにかく、ひろく貧困問題という意味では日本中、当事者だらけだと痛感しました」
山本代表によると、最新の国民生活基礎調査で57.7%が「生活が苦しい」と解答しているという。
本気で政権交代を狙うのは、「格差を是正し、弱い立場の人を救うのが政治の役割」だと思うから。
「一刻も早い政権交代を考えたとき、うちだけですぐにやるのはむずかしい。まずはほかの野党と手を組む必要があるのかな、と」
しかし、野党には消費税を重要な財源と考えている人も多い。
「最低でも消費税5%。これで手を結べるならやっていこうと」
山本代表は、安倍政権に野党が勝てなかったのは、ちゃんとした経済政策を打ち出せなかったからだと考えている。
「『野党が政権を握ったら、ますます生活が苦しくなりそう』と思う人が多いのでは。20年以上デフレが続いているのに、これまでの野党は『財政再建します』と言ってきたわけだから。増税する、と言っているのと同じなんです。これでは勝てるわけがありません」