「10月に消費税10%になり、ますます出費がかさんでいきますが、どうしても削れない、生活に密着した出費もあります。じつはそうした出費の中には、申請するだけで全額、または一部をカバーしてくれる行政サービスが、数多くあります」
こう語るのは、ファイナンシャルプランナーの横川由理さん。『届け出だけでもらえるお金 戻ってくるお金』(宝島社)の監修本もある、ファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さんも同意見。
「複数の制度を上手に組み合わせて利用して、年間10万円以上も得している人も多くいます。でも、そもそも制度の存在を知らなければ、申請することもできませんし、自治体は積極的に制度の対象であると通知はしてくれません。自分で知るしかないのです」
それでは、注目すべき“もらえるお金”を2人に聞いてみよう。
■「仕事」介護休暇でお金が
親の介護で仕事を休む人にとってありがたい制度が「介護休業給付」。雇用保険に加入していることが条件だ。
「私の親が入居する特別養護老人ホームを決めるまで、多くの施設を見学しました。施設探しばかりでなく、病院に同行するなど“1日仕事”もしばしば」(横川さん)
このように介護で休む場合、賃金の67%が最大3カ月まで支給される。パートなどの有期雇用者も対象だが、1年以上継続して雇用されていることなどの条件がある。
【介護休暇をとって給与保障(介護休業給付)】
戻ってくるお金:賃金の67%
申請の窓口:勤務先など
概要:“老親の高齢者施設を探すためにも、まとまった休みが欲しい”場合に利用したい。休業前6カ月の賃金÷180日が賃金日額。この67%が、一定条件を満たすと、要介護の家族1人につき3カ月まで支給される
【再雇用で下がった収入の一部を補助(高年齢雇用継続基本給付金)】
戻ってくるお金:最大、賃金の15%
申請の窓口:勤務先、ハローワークなど
概要:5年以上の雇用保険の被保険者が定年後に再就職先の給料が75%未満に下がった場合、一定条件を満たせば、最大15%相当を65歳になるまで支給する制度
【定年退職で失業するともらえる(高年齢求職者給付金)】
戻ってくるお金:基本手当最大50日分
申請の窓口:ハローワーク
概要:退職前に半年以上雇用保険に加入していた65歳以上の人で、働く意思と能力があるのに再就職できない場合、過去半年の賃金の50〜80%の基本手当が支給される(最大50日分)
【4日以上休むともらえる(傷病手当金)】
戻ってくるお金:日給の3分の2
申請の窓口:勤務先など
概要:「健康保険の加入者が、病気やケガで4日以上の療養期間が出た場合の生活保障です。標準報酬日額の3分の2が、最長1年6カ月分まで支給される制度。インフルエンザでも申請可能です」(風呂内さん)
■「住まい」解体費用を援助
じつは住宅に関する補助は多種多様だ。
「自宅のバリアフリー化や耐震化、3世代同居の一部が減税され、所得税が安くなります。しっかりと確定申告をすれば、還付金が戻ってくるのです。さらに、空き家の解体費用の助成をする自治体も増えている。たとえば、東京都文京区は解体後に10年間、区に無償で貸すことを条件に、解体費用が200万円まで支給されます。実質、無料で取り壊せるのです」(風呂内さん)
【空き家解体でもらえる(老朽危険空家除去費用の助成金など)】
戻ってくるお金:上限150万円で解体費用の80%など(自治体で異なる)
申請の窓口:市区町村の窓口
概要:「親が亡くなり、空き家を抱えて頭も抱えている人は要チェック。倒壊の危険、景観を損なう『特定空き家』などに対して、解体費用を助成します。各自治体によって、助成費用は大きく異なるので、確認しましょう」(横川さん)
【失業したら家賃補助(住宅確保給付金)】
戻ってくるお金:家賃額(原則3カ月まで)
申請の窓口:市区町村の窓口
概要:会社を解雇されたり、自営業は廃業した場合など、賃貸物件に対して家賃相当額が支給される。「ハローワークに登録するなど求職活動していることなどが条件。支給期間が原則3カ月ですが、最大9カ月まで延長できます」(横川さん)
【耐震工事費が戻ってくる(住宅耐震改修特別控除)】
戻ってくるお金:最大25万円(ローンではない場合)
申請の窓口:税務署(確定申告時)
概要:「1981年5月31日以前に建てられた住宅を、現在の耐震基準に満たすための工事費用の10%(最大25万円分)の所得税からの控除が受けられます。100万円の工事をした場合、所得税が10万円安くなります」(風呂内さん)
【3世代同居リフォームでお金が出る!(住宅特定改修特別税額控除)】
戻ってくるお金:最大25万円(ローンではない場合)
申請の窓口:税務署(確定申告時)
概要:「親、そして子どもなど、3世代が同居するために、玄関や浴室、トイレなどを増設した場合に受けられる所得税の減税制度。ローンで支払った場合は、5年間、年末残高の1%か2%の所得税の減税が受けられる(最大65.2万円)
【バリアフリー工事費が戻ってくる(住宅特定改修特別税額控除)】
戻ってくるお金:最大20万円(ローンではない場合)
申請の窓口:税務署(確定申告時)
概要:対象者は50歳以上、あるいは介護認定を受けているなど、条件を満たした人。階段やトイレの手すりの取り付け、和式から洋式トイレへの改修工事などに給付。3世代同居リフォームなどで受けられる減税と併用できる
「自治体によって、サービス内容は多岐にわたり、受給条件もことなります。もし、自分が制度の対象者かもしれないと少しでも感じたら、居住地区の役所などに聞いてみましょう」(横川さん)
聞くは一時の恥。聞かぬは一生の“損”なのだ!