場内に96台のカメラを設置し、人や野生イノシシの侵入を確認する=12日、名護市大川の我那覇畜産「アグー村」 画像を見る

 

家畜伝染病「豚コレラ」の感染拡大を受け、県内では行政機関が水際対策を実施するほか、最後の砦(とりで)となる養豚農家も対策に追われている。沖縄在来種アグーと触れ合える体験を売りにしたテーマパーク「アグー村」(名護市)は、国内での発生確認と同時に畜舎の見学や触れ合いを休止する決断をして以降、丸1年が経過した現在も再開のめどはつかない。

 

国内での豚コレラの発生は17日現在で岐阜、愛知、三重、福井、埼玉、長野の6県43例に上る。殺処分の頭数は13万頭を超え、収束する気配は見えない。

 

国内外からの観光客や留学生が多い沖縄ではウイルスが持ち込まれるリスクが高い。那覇空港では農林水産省動物検疫所が探知犬を使って侵入防止に目を光らせ、県農林水産部は初動防疫の訓練などを実施する。

 

アグー村を運営する我那覇畜産は、アグー約5千頭を含む約1万2千頭の豚を育てる県内大手の農家だ。畜産だけでなく、餌やり体験やアグーが歩く姿を見学できる「アグーランウェイ」など、来場者がアグーと直接触れ合える県内唯一の施設を運営してきた。

 

しかし、2018年9月9日に岐阜県で国内26年ぶりに豚コレラが発生すると、来場者に付着してウイルスが持ち込まれるのを避けるため、即日、テーマパークの一部休止を決めた。レストランや土産ショップなど畜舎と離れた部分だけ開園し、入場ゲートには消毒液を浸したマットを敷いて来場者に靴の消毒を促す。

 

野生イノシシの侵入や関係者の出入り・消毒の有無を確認するため、場内には96台のカメラを設置。施設の職員と外部の者が一目で分かるよう長靴の色を変え、養豚場への出入りを厳重に警戒する。

 

触れ合い体験の再開を問い合わせる電話が毎日あるといい、我那覇崇代表は「アグーに興味を持って国内外から人が来てくれるのに、もどかしさはある。だが、もし県内で発生すれば影響は甚大だ」と唇をかんだ。(石井恵理菜)

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