「美智子さまはご退院後すぐから朝早く起きられて、夜も遅くまでお荷物の整理をされています。あまりに一生懸命やられているので、側近が『ご無理はなさらずに』と申し上げても『そうはいかないのよ』と手をお休めにはならないのです」
そう語るのは、最近の上皇ご夫妻の生活を知る関係者。9月8日に乳がんの摘出手術をお受けになったばかりの美智子さまは、すでにお引っ越しに向けた準備を再開されたというのだ。
上皇ご夫妻は、現在お住まいとなっている吹上仙洞御所から高輪皇族邸(仙洞仮御所)へ引っ越される予定。そして上皇ご夫妻のお引っ越しが完了しなければ、皇居・御所の改装工事に着手できず、天皇ご一家が皇居にお引っ越しになれないのだ。
「美智子さまは、皇居は天皇陛下がお住まいになるところとの思いを強くお持ちです。両陛下に少しでも早く御所を譲りたいとのお気持ちから、ご無理をされているのでしょう。しかし、そうは言いましても吹上仙洞御所には“断捨離”をしてしまえるものなど、ほとんどございません。上皇陛下、上皇后陛下が一つひとつご覧になり、どのように整理すればいいのかを判断なさるほかないのです」(前出・上皇ご夫妻の関係者)
前回お住まいを移されたのは、ご即位から約5年後の’93年12月のこと。上皇ご夫妻は赤坂御所から吹上御苑に新築された御所(現・吹上仙洞御所)にお引っ越しされた。そのときの規模を見ると、赤坂御所から運び出された荷物はなんと2トントラック延べ100台分。そのうち4割ほどは宮内庁庁舎に搬入され、御所に運び込まれたのは約6割。今回も同規模、もしくはそれ以上の荷物になると予想されているため、上皇ご夫妻の“私物”は120トンを超える見込みなのだ。
しかし、高輪の仮仙洞御所はそれほど広くない。赤坂御用地内に新設された倉庫に運び込まれるものもあるようだ。元宮内庁職員で皇室ジャーナリストの山下晋司さんはこう語る。
「外国ご訪問時や来日した賓客からいただいたプレゼント、即位などの際のお祝い品、献上品などは上皇上皇后両陛下の私物になりますが、ご在位が30年という長きにわたりますので、相当な数になっていると思われます」
ご贈進品や献上品の一部は、ご即位30年、ご成婚60年を記念した特別展で展示もされた。英国のエリザベス女王から贈られたボウル、オランダのベアトリックス女王からの花瓶など、外国王室からの贈り物の数々。また国内からも、全国に古くから残る伝統的な名産品が献上されており、歴史的文化的にも貴重な逸品が並んだ。そして、それらの品々はただ保管されているだけではないと話すのは前出の宮内庁関係者。
「沖縄が日本に復帰した5月15日前後、御所の居間の一角にシーサーが置かれます。雲仙・普賢岳の火砕流、三宅島の噴火、終戦記念日、東日本大震災……それぞれに“ゆかりの品”が飾られます。“思いがこもった品々”が多いので、職員が勝手に手を出すわけにはいかないのです」
さらに上皇ご夫妻の蔵書も膨大な量になる。前回のお引越しのときは1万冊といわれた。
「ご研究関係の書籍、ご公務関係の資料なども平成23年度に御所に書庫を増築したほどですから、相当な数になっているのでしょう」(前出・山下さん)
もちろん書籍に関しても、上皇ご夫妻の指示を仰ぐほかない。お引っ越しの準備が整うまでには途方もない時間がかかってしまいそうだが――。
「即位の礼に続き、11月には即位の最重要儀式ともいえる大嘗祭が行われます。天皇陛下と雅子さまもお忙しい日々が続きます。上皇陛下と美智子さまのご体調を案じていらっしゃいますし、決して皇居への引っ越しをお急ぎではないはずなのです」(前出・宮内庁関係者)
美智子さまには、お体に気づかわれながらゆっくりと準備を進めていただきたい――。