米軍普天間飛行場所属の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが2016年に名護市安部の海岸に墜落した事故で、中城海上保安部が被疑者不詳で書類送検したことに関し、米側が米国内のプライバシー保護法を理由に操縦士らの氏名提供を拒んでいたことが16日、分かった。県議会との面談で外務省の川村裕沖縄担当大使が明かした。04年の沖縄国際大学米軍ヘリ墜落事故でも同様の理由で乗組員氏名は明かされなかった。川村大使は日米地位協定抜本的改定を求める県議団に「地位協定が捜査の障害になったとは認識していない」と反論し、必要な捜査が実施されたとの認識を示した。
県議会は15日の最終本会議で、事故の捜査が十分にできなかったのは「不平等な地位協定に起因する」として地位協定の抜本的な改定を求める意見書を全会一致で可決した。県議会米軍基地関係特別委員会の仲宗根悟委員長らは16日、那覇市の外務省沖縄事務所を訪れ意見書を提出した。
川村大使は「米軍人の氏名などの個人情報は合衆国におけるプライバシー保護法で保護されていることなどを踏まえ、提供できない旨の説明を(米側から)受けている」と述べた。
被疑者不詳で送検されたことについては「海上保安庁の捜査の過程で、外務省を含むさまざまなルートを通じて米側と必要な協議をした結果」だと説明した。
「地位協定が捜査の障害になったとは認識していない」という川村大使の発言に対し県議団は反発して発言撤回を求めたが、川村大使は撤回しなかった。「発言は外務省としての公式見解か」との問いにはうなずいた。
県議団は「県議会は自民も含め全会一致で意見書を可決している。県民を愚弄(ぐろう)している」「事情聴取もできず、証拠提供もない中で満足な捜査と言えない」などと批判した。
川村大使は「安全性の確保は米軍が駐留する上での大前提で地元の皆さまに不安を与えることはあってはならない。米側に引き続き安全の確保を求めていく」と強調した。