「この作品って、誰の視点から見るかによって見た人の感想がまったく違うんです。母親目線で見ている人は、『子どもたちは、なんで母親のことをわかってやらないの?』と言いますけど、僕自身は、最後まで『この人、わかんない!』と大樹の視点で見てしまう。いろんな発見があるのは面白いですね」
そう語るのは、映画『ひとよ』(11月8日全国ロードショー)で3兄弟の長男・稲村大樹を演じた鈴木亮平(36)。
15年前、母親が起こした殺人事件のせいで、それぞれにひずみを抱えて生きてきた子どもたち。母との久しぶりの再会に困惑する。
実生活では、兄と妹のいる次男。
「役では長男が多いんですけど、完全に(本作の次男)雄二タイプです。俳優の仕事を選んだのも反骨精神みたいなものの表れでしょうね。親は、やりたいことは自分の責任でなんでも好きにやれ! と言うような放任主義。俳優をやると言ったときも、『大学まで行かせたのに、なんで俳優になるの?』みたいなことはいっさい言いませんでした」
映画は、ひとよ(一夜)の出来事で家族の人生が大きく変わる話。鈴木自身の人生の転換期は?
「やっぱり、『西郷どん』は非常に大きかったですね。芝居に対する意識が90度くらい変わった気がします。自分の中に演じる人間がしっかりできていれば、セリフの言い回しとかで説明する必要はないなあ、と。感情を自然に出すこと以外、テクニック的なものは考えないようになりました」
これから目指す役者像は?
「大河以降、役者人生の第2章に入ったと思っています。また新人に戻ったつもりで、とは言いすぎかもしれないですけど、まだまだ未熟者。本物の表現者になるための努力を惜しまず、新しいことに挑戦していきたいなあと思います」