「今ではヒーロー扱いされてるけど、彼らはそこまで考えてなかったんじゃないかな。ギリギリまで『腹切らんでええんちゃう?』とか言ってた気がするし、本当は死にたくなかったんじゃないかと」
そう語るのは映画『決算!忠臣蔵』で主人公の大石内蔵助を演じる堤真一(55)。討ち入りを予算内に収めるべく奮闘する赤穂浪士の姿を描く喜劇だ。「なんでやねん」とぼやく大石に象徴されるように、劇中の会話はすべて関西弁。これまで英雄視されてきた赤穂浪士が身近な存在に見えてくる。
「脚本がとにかく面白くて。読み終わった後に『実際はこうなのでは?』と思わせる説得力がある。変に笑わせようとせず、真面目にやればやるほど面白くなるんです」
本作の大石を評して、「リーダーシップはあまりなく、動かされて、仕方なくやらざるをえない状況になった人」と言う。舞台で座長を務めることも多い堤だが、自身と比較してみてどうか?
「主役だから引っ張っていこうという気持ちはあまりないです。皆プロの集まりですから。僕らが若いころは舞台が終わってから先輩と飲みに行っていろいろな話を聞くのが楽しみでしたが、今は時代が変わって若い人たちは『お疲れしたー』ですから。誘うのも気を使うし(笑)。お芝居に集中することで示していく以外ないですね」
最後に、堤自身の金銭感覚について聞いてみた。
「ケチです(笑)。というか、物欲があまりない。着るものはほとんどジャージみたいな感じだし。でも、家族にはよいものをと、カミさんにちょっといいセーターを買ってあげたら『もったいなくて着られない。子どもを抱っこしたら、ヨダレでべちゃべちゃになるから』と。外食も、仕事仲間がやってる居酒屋に行くぐらいですね。そんなにぜいたくしたいとも思わないんです」