【久米島】久米島町宇根に星空の見えるガーデンレストランが誕生し、「非日常が楽しめる」とひそかな人気を呼んでいる。満天の星を眺めながら、鳥のさえずりに耳を澄まし、旬の自家製食材を使った沖縄家庭料理を味わう。腕を振るうのはオーナーの真栄平重信さん(73)、京子さん(58)夫妻。1日2組限定で、「地元客はお断り」。そこには「県外の人と久米島をつなぐ場にしたい」との思いがある。
真栄平さん夫妻は3年前に結婚し、民泊を始めた。重信さんが釣ってきたグルクンを唐揚げにし、みそ汁にも入れる。この夏、民泊客が「おいしい! お店をやった方がいい」と立て続けに感嘆の声を上げた。観光シーズンの久米島は、居酒屋が満席で座れないこともある。夫妻は「居酒屋難民を救おう」と、自宅の庭を使ったレストラン「K‘s Garden」のオープンを決めた。
営業は夜だけで、看板も出していない。それでも10月にオープンすると、一人旅の女性らから予約が相次いだ。ブーゲンビリアのアーチをくぐると、バラやハイビスカスに彩られたレストランが現れる。イーフビーチから少し離れた静かな場所。頭上には星がきらめき、フクロウやウグイスの鳴き声も聞こえてくる。
11月下旬、久米島高校への離島留学を希望する澤本綾さん(43)、遥さん(15)親子=金沢市=がレストランを訪れた。テーブルにはグルクンの唐揚げ、月桃の葉に包んで3日間保存したゆで豚、島豆腐、サクナのあえ物などが並んだ。グルクンを口に運んだ澤本さんは「めちゃめちゃおいしい。魚を頭から尻尾まで食べたのは初めて」と喜んだ。
澤本さん親子の笑顔に、笑顔で応える真栄平夫妻。久米島を離れた後も、客と連絡を取り合うという京子さんは「久米島に来て良かった、という思いを抱いて帰ってほしい。このレストランを媒体にして、久米島と県外のお客さんがつながればうれしい」と話した。
料理はコースで1人2800円(税別)。
(真崎裕史)