画像を見る

「SNSは犯罪の起因にはなりますが、すべての投稿が犯罪に繋がるわけではありません。犯罪に巻き込まれる最終決定打は、自分の意思にあります。予測できない事態から身を守るには、スマホの設定と自分の意思が大切なのです」

 

そう語るのは、元埼玉県警捜査一課でデジタル証拠の押収解析を専門に取り扱っていた佐々木成三氏(43)だ。現在、テレビ番組でコメンテーターとして出演。また学生を犯罪から守る目的で設立された「一般社団法人スクールポリス」の理事も務め、学生や企業に向けて講演会を実施するなど幅広く活躍中だ。

 

そんな佐々木氏が今般、これまでの経験を元に初著書『あなたのスマホがとにかく危ない 元捜査一課が教えるSNS、デジタル犯罪から身を守る方法』(祥伝社)を発表した。著書では、「自分と家族をスマホの危険から守るために、最低限必要となる知識・注意点」について詳述しているという。

 

「これまで多くのスマホやSNS関連の犯罪を扱ってきました。昨年でも被害に遭った児童数は1,800人を超えているように、年々増加しています。スマホの危険性について正しい知識を知ってもらうことで、被害者を減らせると思っています」

 

 

スマホのユーザー率は中学生で70.6%、高校生では97.5%(内閣府「平成30年度 青少年のインターネット利用環境実態調査」2019年)。それに伴い、SNS利用者も増えている。佐々木さんは、現代の子どもが抱える危険性についてこう語った。

 

「Twitterの140文字だけで状況を決めつけてしまうように、物事を断片的に判断してしまいがちだと思います。たとえば、ある大学の学園祭で『有名アイドルが握手券を配る』という嘘の情報が流れました。すると、そのまま信じた学生が詰め掛けてしまったということがあったのです。入ってきた情報をそのまま鵜呑みにするのではなく、すべての事柄に『奥行きがある』と知ってもらいたい。そのためには、情報を客観的に観察して判断する『直観力』が必要です」

 

佐々木さんが提唱する『直観力』を養うためには、『アナログの考え方』が必要だという。

 

「スマホやインターネットに頼らず、自力で問題解決できるようになること。たとえば通信障害などでスマホが使えなくなっても、対応策を何通りも把握しておく。それが『アナログの考え方』です。様々なコミュニケーションや経験を通じて、問題解決する発想や知識を養ってもらいたいです」

 

そのためには、親がネットリテラシーを向上させる努力も必要だ。

 

「大人の価値観と照らし合わせて判断できる子どもは、身を守ることができる。だからそう育てることが大切です。今やスマホは大人も仕事で必需品となるくらい便利なツールです。だから子どもに『使うな』とは言えません。大人も危険性の理解を深め、正しいリテラシーを学ぶことが重要です」

 

 

「事件を取り締まるのではなく、犯罪を生まない環境を作りたい」という思いから、刑事を辞めたという佐々木氏。セカンドキャリアを歩む過程で、やりがいを感じるのは「講演会実施後に生徒から返ってきたアンケート回答を読むこと」だ。

 

「いつも大切に持ち歩いているアンケート回答があるんです。昨年、群馬県の中学校で実施したときのものです。ある生徒の回答に『問題の解決方法は無限にあると、佐々木さんが教えてくれた言葉に救われました』と書かれていました。僕がやりたい環境づくりとはこういうことだと、そのときに改めて実感しました」

 

現在は『ケイジとケンジ 所轄と地検の24時』(テレビ朝日系)で、ドラマ監修にも初挑戦している佐々木さん。刑事時代の経験を活かし、リアリティを追求しているという。

 

「刑事役の桐谷健太さん(39)に敬礼や賞状の受け取り方などをお伝えしたり、脚本家の福田靖先生(58)の取材にも協力させていただきました。刑事の葛藤や所作が細部までリアルに再現されているドラマです」

 

マルチに活躍している佐々木さんだが、「自分の本業は?」と自問自答することもあるという。そんなとき支えとなったのが、刑事を辞めるときに書き留めていた「夢ノート」。佐々木さんは「これまで願っていた夢は1つずつかなっています」として、その内容についてこう語る。

 

「犯罪を生まない環境作りのためには、話を聞いてもらえる自分である必要があります。そのために、『メディアに出演して自分を知っていただく』こと。並行して『社員研修、中高生・保護者に向けての講演』や『情報番組を見ない方にも知ってもらうために、ドラマの監修』をすること。そして『より広く伝えるために著書を出版』することです。これから多くの方に著書を読んでいただき、暮らしの安心を手に入れていただければと思っています」

【関連画像】

関連カテゴリー: