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皆さんは「ふるさと求人」をご存じだろうか? 簡単に言うと「地方で就職し移住したら100万円あげる」という、移住したい人にはとてもありがたい国の施策だ。そんな、ふるさと求人について、経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれたーー。

 

■ふるさと求人は地方創生に有効?

 

ふるさと求人は、地方創生を目指す「移住支援事業」の一環で行われる求人です。東京23区内に住んでいるか、勤めている方が、ふるさと求人の対象企業で就職し、5年以上その地域に住む意思を示せば、「移住支援金」として最大100万円(単身者には最大60万円)を支給するものです。

 

さらに、就職ではなく、地方で社会的事業を起業した方には、「起業支援金」として最大200万円を支給。先の移住支援金と合わせると最大300万円を受け取れます。

 

ふるさと求人は、今年度に始まった事業ですが、当初は各自治体が個別に求人サイトを作っていました。でも、なかなか情報が広まらないため、内閣府は求人情報サイトを運営する企業3社と連携。そのうちディップ(株)は、1月22日から「バイトルNEXT」で全国版の特設ページを開いたのです。

 

現在の求人数は1,600件超(’20年2月14日)。物流や建設から接客・営業・介護職・看護師など幅広い職種で支援金対策の求人があります。’07年から求人の年齢制限は撤廃されていますから、中高年にもチャンスがあるでしょう。

 

さらに、移住先を訪ねる「くらし体験ツアー」も開催。たとえば「夜行バスに乗って行く3泊4日の兵庫TOUR」は、新宿から現地の往復バス代や宿泊費なども含めて1人6,000円。求人企業の見学や移住者との懇親会もあります。

 

移住支援金は来年度以降5年間続きます。地方に移住したい方は多方面から情報を集め、ご検討を。

 

こうした支援金は、移住したい方にはお得な制度で利用をお勧めしますが、国の施策としてはいかがなものかと言わざるをえません。

 

というのも、移住促進については地方の自治体がすでにさまざまな補助金制度などを行っています。たとえば奈良県吉野郡川上村では、移住者が川上産吉野材を使って自宅を新築・リフォームし10年間住むなら、建築費用の半額を200万円まで補助する制度があります。

 

国としては、こうした今ある制度がもっと活用されるように、地方に財源を配ってバックアップするのが本来のやり方でしょう。新たに国が主体の補助金制度を作るのは、「地方創生に注力している」というアリバイが欲しいだけではないかと疑りたくなります。

 

また、支援金支給を東京23区の在住・在勤者に限るのは、東京一極集中を避けたいからでしょうが、それならもっと抜本的な施策が必要です。’16年に構想された消費者庁の徳島移転は、’19年7月に断念。文化庁の京都移転も部分的な機能移転にとどまり、さらに’22年以降に延期されるなど、国の機関は東京に集中したまま。これでは企業も動きませんし、人だけ地方に移住しろと言っても無理があるでしょう。ふるさと求人は地方創生の切り札とは言えず、血税の使い道として疑問が残ると思います。

 

「女性自身」2020年3月3日号 掲載

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