2018年7月に事実婚を発表し、2019年9月に長男が誕生した、はあちゅうとしみけん。活躍する業界もファン層も違う異色夫婦が、「これ、どうする?」「あれ、どう思ってる?」と赤裸々に語り合う本誌連載「家族会議 議事録」の第31回。これを読めば、夫婦の揉めごとのいくつかは、すぐに解決できるかもしれません。
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はあちゅう「最近、気づいたことがあるんだ。家事でも育児でもなんでも、『私ができないことは、私の能力不足だからじゃなくて、正しい情報を知らないからだ』って」
しみけん「ほうほう」
はあちゅう「外食したとき、折りたたみ式の海外製ベビーカーを畳めなくて、すごく困ったわけ。でもそのあと、Amazonですっごい安いベビーカーを買ったら、ワンタッチで畳めたり開いたりする。つまり、海外製ベビーカーを畳めない私がダメなんじゃなくて、私に合った正しいベビーカーじゃなかったこと、それを選ぶための正確な情報にたどりついてなかったことがダメだったんだと」
しみけん「なるほど、全部自分の責任だと思いこむのではなく」
はあちゅう「夫婦間のいざこざも、努力が足りないとか能力不足とかって思うんじゃなくて、意外と『仕組み』ごと改善すればいいんじゃないかって。たとえば、2人とも忙しいときに家事分担が問題になって、『お前がやれよ』『いや、お前のほうがやってる量が少ないだろ』って揉める前に、家事代行を頼んだら、根本から解決するんだよ」
しみけん「はあちゅうは、週1で家事代行を頼んでることをSNSでも投稿してるけど、批判的な意見も多いんだっけ?」
はあちゅう「Twitterでは批判が多くて、インスタでは肯定的な意見が多いかな。でも家事代行って、みんなが考えてるより安いんだよね。1回で1〜2万円かかるイメージの人が多いけど、実際は2時間4,000円くらい。これも正確な情報にたどりつけてないから、仕組みの改善ができない一例」
しみけん「なんでも、向き不向きがあるからね。不向きなことをやろうとすると、すごいストレス。旦那さんと奥さん、どちらにも向いてないことは、向いてる人に外注する考え方のほうが、生きるのが楽になる」
はあちゅう「私の知り合いの奥さんは、どうしても家事を外注したくない人で、旦那さんと家事を分担したがってた。だけど旦那さんは忙しくて、『自分でお金を払うから、僕の分担ぶんは家事代行にまかせてもいいか』って申し出たんだけど、奥さんは『絶対に嫌だ』と。それで離婚しちゃったよ。『私は自分でやるのに、あなただけお金出して外にお願いするのはずるい』って。『あなたにも、家事の大変さをわかってほしかった』と」
しみけん「それ、家事代行を頼まなくても、いずれ離婚してたんじゃ……」
はあちゅう「夫婦関係をキープするための努力として、根本的な『仕組み』改善は大事だよ。我が家の例で言うと、息子がまだ哺乳瓶を自分でつかめないから、私がずっと持ってなきゃいけなかったよね。それを見かねたけんちゃんは、哺乳瓶スタンドを買ってきてくれた。結局、あんまり役に立たなかったんだけど(笑)。でも大事なのは、私に『もっと頑張れ』って言うんじゃなくて、すぐに解決手段を調べて、お金を出して解決しようと動いてくれること。すごくありがたいと思ってるよ。常に、『今よりよくしたい』ってマインドがある。そのための実験を、いとわない姿勢」
しみけん「それで言うと僕、2019年の10月に、キャンピングカーを買ったんだよね。『現場と現場の間の時間に、車内でパソコン作業ができるかな』と思って。でも、まったく乗らなくて、2020年の1月には売りに出した」
はあちゅう「たった4カ月で(笑)」
しみけん「そうしたら、『はあちゅうさんに怒られませんでしたか』『なんで買ったんですか』って言われたんだけど、キャンピングカーを所有する体験をしたかったんだ。所有しないと、見えない世界があるだろうから。哺乳瓶スタンドもキャンピングカーも、とりあえず試す。そうやって経験の引出しを増やさなきゃ、人生うすっぺらくなっちゃうよ」
はあちゅう「けんちゃん、ユーチューバー精神で生きてるよね。『今日は、これを試してみました』みたいに。だけど多くの人は、お手軽でインスタントな方法ばっかり求めてる。こないだ、けんちゃんがやってておもしろいなと思ったのが、通称『すべってもいい話』という会」
しみけん「集まる人たちに、『おもしろい話を3つ持ってきてください』って事前に言っておくやつね。集まったらホワイトボードにトークテーマを書いて、順に話す。仮にすべっても、ほかの人たちが優しくルーズボールをさばいてあげる。役に立たない話ばかりだけど、それをどうにか人に話せるように揉むんだ」
はあちゅう「私がけんちゃんを偉いなと思うのは、つまらないかもしれないとわかっている席にも、ちゃんと飛び込んでいって、確実におもしろいものをつかんでくるところだよ」
しみけん「4時間会食して、あとで人に話してネタになるのは15秒くらいにしかならなかったりするけど(笑)。もしかしてネタになるかもしれない、めちゃめちゃ小さい種を、丁寧に丁寧に広げてるのよ。そのささやかな話のネタを、誰かに提供する。日々、これの繰り返し」
はあちゅう「結婚も、こういうことだと思うんだよね。テレビ番組の収録にたとえるなら、『1日じゅうロケして、10分使えるか使えないか』みたいな。それが結婚であり、人生ってものなのに、インスタントに『サビ』だけを求める人が多すぎる。コスパとか、『撮れ高』を考えて結婚してるというか。その10分のために、1日が必要だったりするのに、使える10分だけを求めていると、幸せになれないと思うの」
しみけん「哺乳瓶スタンドもキャンピングカーも、やっぱり必要な体験だった」
はあちゅう「一見無駄に思える体験のなかから、意味をつかむ。それが結婚なのかもね」
【はあちゅう】
1986年、神奈川県生まれ 慶應大学在学中より、ブロガー活動を開始。会社員経験を経て、2014年フリーに。最新刊に、『とらわれずに生きるための幸福論 じゃない、幸せ。』(秀和システム)がある
【しみけん】
1979年、千葉県生まれ 1998年にデビューし、出演本数は約1万本の現役AV男優。3月26日に、新著『AV男優しみけん仕事論0.01 極薄!』(扶桑社)を発売
取材&構成・稲田豊史
(週刊FLASH 2020年4月14日号)