飲食業や観光業の窮状、あるいは医療関係者の奮闘はあらゆる媒体で日夜報じられているが、それに比して、見落とされがちなのが介護事業者だ。いま、現場は非常に厳しい闘いを強いられている。
「自粛生活開始後“1カ月しのげば元に戻る”と期待していましたが、新型コロナとは長い闘いとなりそうです。とくに通所介護施設は中小、零細でやっている事業者が多く、自転車操業。返済が苦しいので融資も躊躇します。この状態が続けば数カ月後にはバタバタとつぶれていく可能性があります」
そう話すのは、通所介護事業を行う「DAYS BLG!」(東京都)スタッフ代表の佐藤亜美さん。
こうした声を受け、「全国介護事業者連盟」は4月、5月の2回にわたり、同連盟会員の事業者を中心に、新型コロナウイルス感染症に係る経営状況への影響についての緊急調査を行った(有効回答数・合計約3,600)。同連盟の専務理事・斉藤正行さんが分析する。
「あらゆる業務で売り上げの悪化が見られます。特に通所介護の利用控えは顕著で、9割が経営への影響があると回答」
介護サービスの事業者の利益率は、介護報酬の設定によって2〜3%ほどに抑えられている。
「ギリギリで経営している所が多く、10%や20%の減益で、急速に経営状況が悪化してしまうんです」
5月25日、緊急事態宣言が解除された。介護事業も“日常”に戻るのかと思いきや、それは甘い認識だという。
介護施設のコンサルタントを請け負う「スターパートナーズ」代表の齋藤直路さんはこう指摘する。
「介護事業の利用者は、新型コロナウイルスの影響を受けやすい高齢者や基礎疾患を持つ人が中心です。一般の業界よりも影響は長く、今後1〜2年は続くでしょう。休業のまま閉鎖したり、身売りを検討している施設は少なくありません。倒産数も増えるでしょう」
“施設がなくなれば、別の施設に”という単純な問題ではない。
「利用者にとって重要なのは、なじみの職員や友人との人間関係。それが断ち切られてしまう影響が大きい。また、施設がなくなるということは、家族がカバーしなくてはならない。“介護疲れ”や“介護離職”が起こりかねません。施設単位の努力だけではなく、国や自治体にも、人件費や家賃の補助、最前線の職員への慰労金の拡充など、介護施設を“つぶさない制度”が求められているのです」
前出・全国介護事業者連盟の斉藤さんは最後にこう付け加える。
「介護サービスがなければお風呂に入れない人もいるし、働きに出られないご家族もいます。介護は生活や命に関わるもの。不要不急ではなく、必要不可欠なものです」
ウイルスから利用者を守るために闘う全国の介護事業者の声は、政府に届くのだろうか。
「女性自身」2020年6月16日号 掲載