新型コロナウイルス感染症の影響で3月以降、県内でも披露宴の延期、中止が相次ぐ。ブライダル関係者は「年内は披露宴はないかもしれない」とため息をつく。結婚式を予定する夫婦も、披露宴開催の可否に頭を抱える。招待者が300人以上になることもあり、多彩な余興や最後のカチャーシーなど、沖縄の披露宴は大人数で行われることが特徴だ。新型コロナが広がる状況下で、県内の結婚式場は新たな披露宴の形を模索する。
5月に婚姻届を出し、結納を済ませた勝連さやかさん(24)は来年1月に披露宴を予定するが、不安を隠せない。冬に第2波が来ることも想定し、家族内では「来年の夏にした方が出席者も安心して来られるのでは」という意見も出た。しかし来年度は転勤の可能性もあるため、本年度中での開催を目指す。「正直、披露宴をやるとも言いづらいし、呼んでも安心して来てくれるか心配だ」と複雑な表情を見せる。
日本ブライダル文化振興協会が作成したガイドラインでは、披露宴の席は飛沫感染が十分に防げる間隔を取ることや、提供する料理は個人盛り、余興の際は列席者との十分な距離を取ることなどを求めている。
那覇市の沖縄かりゆしアーバンリゾート・ナハは新しい生活様式に対応した宴会の在り方を提案する。「密」を避けるため丸テーブルに着席する人数を12人から6人に半減した。収容人数はこれまで最大260人ほどだったのが、150人になる。料理は大皿料理をあらかじめ小皿に取り分けることにも対応する。
客には(1)乾杯の時は声を発さず、グラスを合わせない(2)余興はできるだけ声を発しない。ビデオ余興を推奨する(3)カチャーシーは席に座ったままか席付近で(4)披露宴終了後の退席はグループごと―の4点をお願いする。
ブライダル関係者を悩ませるのは祝儀だ。少人数の披露宴が一般的な県外の祝儀は3万円が相場なのに対し、沖縄の相場は1万円。多くのカップルが祝儀を披露宴の費用に充てるため、祝儀の額がそのままで少人数の披露宴になれば、新郎新婦の金銭負担が増すことになる。「少人数、コース料理が定番になれば、沖縄の祝儀の相場も変わってくるかもしれない」と関係者は見る。
招待客が会場に集まるのではなく、オンラインでつながって新郎新婦を祝う「リモート結婚式」を提案する動きもある。ウエディングフォトスタジオ「ENJOY!WEDDING」(浦添市)の遠藤菜利子さんは、動画配信や編集のプロ、老舗洋食レストラン「ピザハウス本店」と組み、披露宴を動画で配信するだけでなく、料理も届ける仕組みを整えた。遠藤さんは「これなら遠方の人、会場に来ることが難しい人も参加できる。レストランウエディングの一つのオプションとして定着すれば」と考えている。
披露宴の司会を務める、パーソナリティーの玉城愛さんは「沖縄の披露宴は、両家の親に感謝を伝える場でもある」と説明する。「自分はこんなに多くの人に支えられていると新郎新婦が認識する機会でもある。工夫をすれば、沖縄の文化である披露宴を守っていけるはず」と願った。
(玉城江梨子、中村優希、石井恵理菜)