新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が沖縄県内で相次ぐ中、県内の学生寮では感染拡大防止に努める日々が続く。島根県では高校のサッカー部員の寮を中心にクラスターが発生する事態も起き、沖縄県内の学生寮でも緊張が高まる一方、生徒は「友達や親と会えない。ストレスがたまる」と精神的な負担を口にした。寮の管理職員は「感染対策と併せ、生徒の食生活や精神面での支援が課題だ」と語った。
那覇市長田にある学校法人尚学学園の学生寮「尚学舎」。沖縄尚学高と付属中学の生徒36人が入寮し、寝食を共にする。部屋は全員個室。県内離島や中北部に加え、県外や海外から進学し、入寮した。渡航自粛要請前に一時帰省した23人を除き、18日時点で13人が生活している。
3月から手指消毒の徹底、自室以外でのマスク着用、朝、夜の点呼時に検温を取り入れた。生徒が自分で食事を配膳する。社会的距離を保って並び、手を消毒してから皿に盛る。食卓では向かい合いと隣り合いを避けて座り飛沫(ひまつ)感染防止のため極力無言で食べる。県外から戻ってきた生徒は静養室で1週間を過ごす。
寮内での感染者はゼロで、体調不良者もいない。寮管理担当者の与座宏章理事長補佐は「寮は学生にとって家庭に代わる場所だ」と語り、親代わりとして感染防止対策に万全を期す。だが、生徒の疲れた表情を見ると葛藤も抱く。寮長も務める沖尚高の村吉政宗教諭は「これまでとは違う生活で、生徒はストレスがたまっているようだ」と気に掛けている。
那覇市東町の離島児童支援センター「群星寮」には主に離島地域の生徒が入寮する。生徒107人のうち、18日時点で50人ほどが実家などに帰省し、60人ほどが寮で生活している。
入寮者は外出を極力控え、外部からの訪問者を受け入れていない。食事は学年と男女で分けるなど対策している。今後、間仕切りも設置する予定だ。かつては生徒が食堂に集まり、トランプなどをしてにぎやかだった。生徒を見守る大宜見勝美所長は「クラスターの発生に気を付けているが、子どもたちも自由にさせたい。バランスが難しい」と漏らした。
尚学舎に中学1年から入り、現在沖尚高1年の新城琴音さん(15)はマスク着用などの感染防止策を徹底するが、「友だちの部屋にも行けず、ストレスがたまる」と吐露した。転勤で東京に勤務する母の奈々恵さん(37)とのビデオ通話が、コロナ禍の中で数少ない楽しみだ。気を付けようと励まし合うが、直接会えないつらさがある。「お母さんに会いたい」と琴音さん。奈々恵さんは「娘に会うため帰省したいが、東京も沖縄も感染者が多いので自粛している。娘の日々の生活をサポートできないことにさみしさが募る」と電話での取材に語った。
コロナの収束が見通せない中、与座さんは「感染防止の徹底と同時に、生徒のメンタル面のケアも課題だ」と対策を練っている。
(照屋大哲)