トランプ大統領のコロナ感染により、大混乱を呼んでいる大統領選。勝利を狙うバイデン氏が、全幅の信頼を寄せるこの女性の歴史をひも解いてみようーー。
現地時間11月3日に投票日を迎えるアメリカ大統領選。9月29日に行われた第1回テレビ討論会を皮切りに、共和党・トランプ大統領(74)と民主党・バイデン候補(77)の本格的な争いが始まった。
「史上最悪の討論会」と現地で報じられるほど、“大舌戦”を交わした両者だが、民主党サイドにはある“懸念点”が……。
「バイデン氏が勝てば、78歳で大統領に就任することに。高齢なことから、健康面を不安視する声が上がっています。そこで注目を集めているのが、民主党の副大統領候補であるカマラ・ハリスさん。バイデン氏に不測の事態が起こった場合、彼女が大統領に就任することになるため、史上初“女性大統領の誕生”もありえない話ではありません」
そう語るのは、アメリカ大統領選ウオッチャーで、明治大学教授の海野素央さん。ハリスさん(55)が注目を集めている理由について、こう続ける。
「ハリスさんは女性であることに加え、ジャマイカ人とインド人の移民を両親に持つ人物。性別・人種の壁を乗り越え活躍するハリスさんを、バイデン氏も“将来のアメリカの象徴”と称しています。昨年8月、ネバダ州ヘンダーソンの集会でハリスさんの演説を目の当たりにしましたが、笑顔が非常にチャーミングだったことを覚えています。有権者を鼓舞するような力強い演説は、リーダーの資質も感じさせました」
“次々期”大統領候補と目されるハリスさんの人物像を探るため、海野さんや在米日本人の証言から、トリビアを掘り起こしてみた。
【1】名前の由来は“女神”
「カマラ」は「蓮」を意味し、ヒンドゥー教の神話に出てくる女神「ラクシュミー」の別名といわれる。母のシュヤマラさんは、“女神を崇拝する文化が、強い女性を育てる”という思いで命名した。
シュヤマラさんは「何かを成し遂げたいなら、ベストを尽くすこと」と常にハリスさんに説いたという。
【2】両親の出会いは「人種差別の反対運動」
ハリスさんは、’64年10月20日、米カリフォルニア州オークランドで生まれた。
「インド人であるシュヤマラさんは、がんの研究者。ジャマイカ人の父親ドナルドさんは、スタンフォード大学教授の経済学者。ともに移民で、黒人に対する人種差別の撤廃を求める『公民権運動』を通じて知り合ったと報じられています」(海野さん)
両親は、ハリスさんをベビーカーに乗せてデモに参加。幼児期からその光景が記憶に焼き付いたのか、シュヤマラさんがぐずるハリスさんを「何が欲しいの?」となだめようとすると「じゆうがほしい!」と叫んだそう。
【3】13歳でデモを成功させるリーダーシップの持ち主
中学・高校は、カナダのモントリオールで過ごしたハリスさん。当時住んでいたアパート前の芝生は、遊ぶことが禁止されていた。
「これに当時13歳のハリスさんと妹のマヤさんは、デモによって抗議。芝生を遊び場とする権利を勝ち取ったという逸話があります」(在米日本人)
のちに黒人の学生が中心の、名門大学・ハワード大(ワシントンD.C.)に進学し、政治学と経済学を専攻した。
多くの注目を集めるハリスさん。10月7日には、共和党のマイク・ペンス副大統領(61)とのテレビ討論会を控えている。
「ヒラリーさんでは獲得できなかったマイノリティの票を、どれだけハリスさんが獲得できるか。テレビ討論会は、その命運を分ける非常に重要なポイントとなるでしょう」(海野さん)
「女性自身」2020年10月20日号 掲載