「今回の役は萩原(慎一郎)さんの遺作を背負ってますし、撮影はこれまでになく身の引き締まる思いで挑みました」
いじめ、非正規雇用などの経験をもとにした歌集を執筆後、32歳で命を絶った歌人・萩原慎一郎。その遺作をモチーフにした映画『滑走路』(11月20日公開)で、激務の中で理想を失い、無力な自分に悩む若手官僚・鷹野を、浅香航大(28)が演じた。
「彼は仕事がうまくいかないストレスをため込んで、世間との関わりを絶った色みのない生活を送っているんですよ。演じるにあたって、細かい気持ちの変化や、上司や同僚との距離感は監督と緻密に話し合って役に入りましたね」(浅香・以下同)
じつは取材した時点では、共演者とはほとんど会えていなかった。
「鷹野が人との関わりがない生活を送っているということもあって、共演のシーンがほとんどなくて……じつは、(主演の)水川あさみさんとも、まだお会いしたことがないんですよ! これは共演っていうのかな(笑)。舞台挨拶でお会いしたら『はじめまして!』って言います(笑)」
一人のシーンが多く、緊張感のあった現場では、20代前半での経験が生かされた。
「俳優人生の転機になった、映画『桐島、部活やめるってよ』に出演したころは、社会で自分が置かれているポジションをより意識していたタイミングで。もともとメンタルの上下が激しくてナイーブな性格っていうのもあって、深酒することでストレス解消していました。そういった経験も思い出しながら演じられましたね」
今では自分との付き合い方がわかってきて、ひとつの“ルーティン”を見つけたそう。
「風呂とサウナとジムと飲み屋がそろって入っている建物があって、基本的に休みは1日そこにいます(笑)。風呂入って、好きなタイミングでトレーニングしてサウナ入って飲みに行くみたいな(笑)。撮影がある時期は(サウナの)休憩室で台本を読むと、めちゃくちゃセリフが入るんですよ! それがストレス解消になってますね」
日々、さまざまな役者から刺激を受けているという浅香。最近、とくに感銘を受けた俳優が……。
「ドラマ『梨泰院クラス』のパク・ソジュンってすごいなって思いましたね! 作中、何年もたって年もとっているはずなのに、ビジュアルはなにも変えてないんですよ! 僕も、そういうところを押し切れるだけの説得力をもった俳優になっていきたいですね」
「女性自身」2020年11月24日号 掲載